第5話 「母の愛3」
リビングの空気は、柔らかい日差しに包まれていた。
相馬にとって2度目の家庭訪問。
今日は同期の中川も同行している。
少女の眼差しは母親を信じてやまない。母の手のぬくもり、優しい声、差し出される湯呑み――すべて母の行動を安心の象徴として受け入れているように見える。
「さあ、もう一杯お茶を淹れたからね」
母親はにこやかに湯呑みを持ち上げ、少女に差し出す。少女は迷わず受け取った。
どうにか力になれないかしら――
若い中川は鼻息荒く母娘の話を傾聴する。
一方で、相馬は少し距離を取り、母娘と中川のやりとりを観察する。
「ちょっとお部屋も見させて欲しいな」
中川が母娘と部屋を出たタイミングで相馬が動く――。
相馬はポケットから取り出し小さなスポイトでを湯呑みの中の液体を吸い取る。
「よし…」
相馬は心の中でつぶやいた。
相馬がことを終えてまもなく、母娘と中川が談笑しながらリビングに戻ってくる。
少女は相変わらず母を信じ切って微笑む。
…が、その顔色は相変わらず悪い。
午後の日差しの中、相馬はポケットに入れた右手を握り、決意を新たにした。少女が信じる安心を壊さずに、真実を明らかにする――この微妙な均衡こそが、今回の最も重要な任務だった。
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