第2話 卵産んじゃった!

その日は、突然やってきました。


二歳も間近になった五月。

オカメさんはちょっぴり怒りっぽく、挙動不審になりました。


元々、とても温厚なオカメさん。

怒りっぽくなったと言っても、そんなにガーガー怒るわけでもなく、何かの拍子にちょっと威嚇する程度でした。

ですから、季節の変わり目でイライラするのかしら、なんて、私はのんびり構えていたのです。


ところが、ある朝ケージを覗くと、そこには見慣れない白いものが……。


そこにあったのは、小さな卵。


そうです、オカメさんは初めて卵を産んだのです。




メスのインコは、オスのパートナーがいなくても、発情期になれば卵を産むことがあります。

勿論、その場合は無精卵です。

スーパーで売られている鶏卵と同じですね。

オカメさんは一羽飼いなので、無精卵を産みました。



多くのインコ達は、春と秋の二回発情期を迎えます。

メスは、身体が成熟していて、発情の引き金になるものがあれば、卵を産みます。

それは生殖本能であり、自然なことなのです。


オカメさんの発情の引き金、それはケージの中の玩具でした。

ケージの上の部分に引っ掛けて垂らしていた、チリンチリンと鈴の鳴る玩具。

オカメさんは止まり木に止まり、それに向かって頭を低くし、お尻を上げて、


ウピピピピ……


と、可愛らしく鳴いていたのです。


実はその頃の私、発情のサインであるそのラブコールを、「まあ、かわいい♡」くらいにしか思っていませんでした。


オカメさんをお迎えする前に、本やネット情報、先輩鳥飼いさんに話を聞くなどしてオカメインコについて勉強していたつもりでしたが、産卵がどれ程インコの負担になるのかということは、そこまでピンときていなかったように思います。

姉が飼っていたオカメインコの記憶はだいぶ薄れていて、卵を産んで抱卵していた様子はおぼろげに覚えていましたが、特に問題が起きたこともなく、産卵=一大事、という印象はなかったのです。


今思えば勉強不足であり、オスのインコとしか暮らしたことがなかったが為の油断でもありました。



そうした油断と共に始まったオカメさんの産卵は、その後、飼い主である私を大いに悩ませることになるのです。




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