21歳、エスカレーターを降りたあと
☓ ☓ ☓
「志麻先輩どこ行くんですか。画廊はこっちですよ」
ショッピングモールの長いエスカレーターを降りるなり、スタスタと歩き出した志麻先輩を呼びとめると、志麻先輩は小さな水たまりを飛び越えるようにジャンプして、私の隣に戻ってきた。
「なんで画廊の場所知ってんの?」
「高校時代、一人でよく立ち寄ったので」
「ああ、友達少なかったもんな」
「そんな辛辣なこと、私に言っていいんですか?」
「いいだろ別に。どうせ俺にだけはなに言われても傷つかないだろ」
志麻先輩が顔を傾けて私を見る。窓から差し込む光がその瞳にかかった。
志麻先輩は生粋の日本人だけど、光の加減で瞳が亜麻色に見えることがあった。コンセントに繋がれてるみたいに夢と希望をぴかぴかと放出しながら、人生を楽しんでいた当時、十七歳の志麻先輩。
けれど残念なことに、その輝きはもうどこにもなかった。
私の顔を覗き込んでいる先輩の瞳は、疲労と切なさに覆いつくされてる。
この人はいつ、コンセントを引き抜いてしまったんだろう?
訝しむ私を見て、志麻先輩は気の抜けた炭酸水みたいに微笑んだ。
「だって高校時代、俺のことはずっと眼中になかったもんな? 君は」
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