第一部 閑話5 観測者の更新:物語という誤差

 記録は、想定から逸脱し始めている。


 因果は弱く、結果は遅い。

 それでも、世界は拒絶していない。


 これは効率の問題ではない。


 “物語”が発生している。


 選択に意味が宿り

 待つ時間が価値を持ち

 失敗が余白として残る。


 観測者は、初めて予測を手放す。


 この調律者は、世界を救わないかもしれない。


 だが――

 世界と、同じ食卓につく可能性を持っている。


 それだけで、十分だ。

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