第一部 閑話 観測記録 予測外要素の発生
観測対象:調律者候補・ユウ。
境界領域通過時、
本来、魔力循環の乱れが一定値を超えた領域では、もふ族は恐怖または逃避行動を優先する。
しかし当該個体は――
恐怖を示しつつも、対象から離れなかった。
◆
これは想定外である。
調律による影響は、通常「魔力」に限定される。
感情・判断・選択にまで及ぶ事例は、記録に存在しない。
にもかかわらず、もふ族は “理解”ではなく“信頼”によって行動を選択した。
原因は明白
調律者候補が行っているのは、修復でも浄化でもない。
――摂取
――共有
――満たす、という行為。
◆
世界は長く、効率と制御を優先してきた。
だが彼は、傷んだものを排除せず、歪んだものを裁かず、ただ「食べさせる」という選択を取る。
その結果、最も影響を受けたのは――
世界ではなく、観測対象周囲の“意志”であった。
◆
評価を更新する。
調律者候補・ユウは、単独の修正因子ではない。
周囲の存在を巻き込み、選択の方向性そのものを変化させる、連鎖型変数である。
――危険度:未確定
――価値:上昇
引き続き、直接干渉は行わない。
ただし
この先、彼が“食卓”を誰と囲むかによって、世界の行方は大きく分岐するだろう。
観測は、継続される。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます