第17話 第三種接近遭遇

魔法陣の光が、急に色を変えた。


 白でも青でもない。

 黄ばんだ、病的な光だ。


 善之は反射的に顔を上げた。


 ――来た。


 摩耶観光ホテルの上空、夜雲を押し分けるように、

巨大な葉巻型の物体が現れた。


 鈍い黄色。

 金属なのに、どこか有機的で、脈打つような陰影。


「……UFO」


 直子の声が、震えを含んで漏れた。


 次の瞬間。


 下からではない。上からだ。


 空気そのものが引き伸ばされ、

善之の体が、ぐっと持ち上げられた。


「っ――!」


 足が地面から離れる。


 抵抗できない。

 力ではなく、意思そのものを引き抜かれる感覚。


「善之!」


 小雪が腕を掴むが、

その手が、ずるりと滑った。


 世界が回転する。


 視界が黄色に染まる。



 次に気づいたとき、

善之は“中”にいた。


 天井も床も分からない。

 全方向が、薄く発光する有機金属。


 重力はあるが、方向が曖昧だ。


「……ここは……」


 言葉が、妙に遅れて響く。


 正面に、影が現れた。


 人型ではない。

 だが、人を真似ている。


 頭部は異様に大きく、

目にあたる部分が、幾何学模様のように分割されている。


 視線が合った瞬間、脳の奥が疼いた。


《アダプト、開始》


 声ではない。

 思考に直接、流し込まれる。


 善之の体が固定される。

 透明な膜が、四肢を拘束した。


 ――逃げろ。


 そう思った瞬間、

記憶が勝手に開かれた。

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