翔真が校舎を後にしたのは午後六時近くになってからだった。


 最後の授業が終わった後、隣のクラスの友達が空き教室にてトレーディングカードゲームで遊ぶと聞いて、見物しに行くことに決めた。

 翔真はコンピューターゲームだけではなく、TCGも好きだった。

 将棋や囲碁も好きだし、ボードゲームも好きだし、勿論、トランプも好きだ。大抵のゲームでは楽しく遊ぶことのできる人間だった。


 接戦に野次を飛ばしたり、デッキを借りて対戦していたりする内にあっという間に時間は過ぎて、解散となった。

 同じ地域に住んでいる友達と共に家路に就こうと自転車に乗った段階で、やっぱりゲーセンに行こう、と思い直した。

 好きなシューティングゲームを無性にやりたくなってしまったのだ。


 ほとんどのゲームを楽しめる翔真だが、特に弾幕系のSTGが好きだった。

 ある格闘ゲームにおいては名古屋有数の強さであるし、格ゲーに詳しい従兄弟からも「才能がある」と言われているが、一番好きなのはSTGだった。

 近くのゲームセンターには名の知れた弾幕シューティングの筐体があった。蜂のボスとそのボスが展開する壮絶な弾幕が有名なタイトルだ。1990年代に世に出たものなので、もうアーケードゲームとしてプレイできる店は限られている。筐体が撤去される前にハイスコアを更新することが翔真の人生の目標の一つだった。


(今からでも一時間は遊べる。誰かいたら、格ゲーもできるし)


 樵木家の門限は夜七時。

 それも、厳密なものではない。七時前に店を出ればいいだろう。

 妹には……、何か言われるかもしれないが。

 校門の前で駄弁り始めた友人達に別れを告げて、翔真は地元のゲームセンターへと自転車を走らせた。


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