第3話
「松原……。
もう僕に干渉しないで。
もう、大丈夫だよ」
「どこがだよ……。
おかしいじゃないか。
無理しやがって……。
顔色悪いぞ」
「公務員になったんだから。
いじめなんて、序の口さ」
「そんなこと言ってくれるなよ………。
どうせいじめを止めてくれるって?
榊先生の幻影を持ってたんだろ?」
孕んだ風が吹く。
僕達を引き裂くみたいに。
「榊先生の顔を見たくなったんだろ?
男同士であるお前のことだ。
気持ちが分からないとでも?」
足を止める。
「だとして……、止まれないよ。
僕は、すがる家もない」
はっと息を呑む、松原。
「生きていくには、仕方がない。
それなりの高いお金だって必要だ。
だから公務員を選んだんだよ。
必死に生きてるのに」
「そりゃ……そうだけど」
「「ちゃんとした家族」もいるくせに。
そんな事を言われる筋合いはないよ。
松原に」
僕は、公務員になった最初の1年後。
親と絶縁した過去を持つ。
それは勉強虐待という呪われた過去。
それを一掃するため。
虐待行為を今でも許せないからだ。
親を殺してしまいそうだったから。
だからこそだ。
僕は親の存在を認める為に離れた。
「……ごめん」
「だけど、鋭いね。
辞めたいと思う気持ちもあるんだ。
ないことは、ない」
持っていた傘の司をギュッと握る。
「どうして、だろうって。
ナズナは何故、僕のことを恨んでる?
どうして?
何故なんだろうって」
パラパラと雨が降ってきて。
「そして、悩みでもあるんだ。
僕を同調していじめる生徒だね。
そんな生徒に対してさ。
導いてあげられないんだ。
やめるようにって。
人として導いて挙げられないんだよ」
泣いている子供。
母親があやして背中を擦っている。
「そう思ってしまう。
思って嫌になる時はあるんだ」
「三月、お前……」
「僕はーーあの生徒のことをね。
たぶん好きなんだよ。
あの件を忘れられない。
だから、ナズナが好きなんだ」
子供をギュッと抱きしめる、母親。
目線をそらして、傘をさす。
「愛しているからこそだ。
深く踏み出せない。
この辛さ、君に分かる?」
ぞろぞろと親族が出てきた。
ーー「あの方は良い教師だったみたいよ」ーー
と棺桶を指さす。
「三月………そこまで………。
やっぱり好きなのか?」
コクリと頷く。
雷がゴロゴロと遠くで鳴った。
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