現代に突如現れた初見殺しダンジョン、攻略法が俺のやり込んだ「死にゲー」と全く同じだった件〜天才ゲーマー会社員、配信しながら世界最速で無双する〜
第1話 ただの会社員、新宿ダンジョンの『入り方』を知っているのは俺だけだった
現代に突如現れた初見殺しダンジョン、攻略法が俺のやり込んだ「死にゲー」と全く同じだった件〜天才ゲーマー会社員、配信しながら世界最速で無双する〜
霧島ロジカ
第1話 ただの会社員、新宿ダンジョンの『入り方』を知っているのは俺だけだった
満員電車の窓に映る自分の顔は、死んだ魚のような目をしていた。
蓮見蓮(はすみ・れん)、二十六歳。
都内のIT企業でデータ入力を担当する、いわゆる「窓際」の会社員だ。
だが、俺にはもう一つの顔がある。
昨晩、世界で最も不条理と称される超高難易度アクションゲーム『アビス・ソウルⅣ』において、世界初の「全ボス・ノーダメージ・初期レベルクリア」を達成した伝説のプレイヤー。
ネット上では「神の反射神経」と謳われる男だ。
現実世界の俺は、上司に突き返された書類の山を思い出し、重い溜息を吐いた。
――そんな時だった。
ガクンッ、と車両が大きく揺れ、非常ブレーキの音が鳴り響く。
「な、なんだ!?」「爆発か!?」
新宿駅直前で止まった車内から外を見た乗客たちが、一斉に悲鳴を上げた。
駅ビルが消えていた。
いや、消えたのではない。巨大な、天を突くほどの「漆黒の霧の塔」に飲み込まれていたのだ。
空は赤黒く変色し、塔の周囲には、この世のものとは思えない翼を持つ怪異が飛び交っている。
一時間後。
駅周辺は自衛隊と警察によって完全に封鎖された。逃げ遅れた人々を救出するため、最新鋭の装備に身を包んだ特殊部隊が塔の入り口――不気味に脈動する霧の障壁――へと突入を試みる。
「下がってください! 危険です!」
立ち入り禁止区域の外側で、俺はスマホを掲げる野次馬に紛れ、その光景を眺めていた。
「おい、行くぞ! 突入!」
隊長の合図と共に、隊員たちが障壁に触れる。
その瞬間、凄まじい衝撃波が巻き起こった。
「ぐわああああっ!?」
鍛え上げられた隊員たちが、まるで巨大なトラックに撥ねられたかのように後方へ吹き飛ばされる。障壁はびくともせず、青白い幾何学模様が浮かび上がった。
「ダメだ! 物理的な破壊は不可能、レーザーも通じない! 入り口そのものが、人類を拒絶している!」
中継カメラに向かって叫ぶ専門家の声が、絶望を加速させる。
だが、俺の目には全く別の景色が見えていた。
(……あの光景、あの光の点滅周期。間違いない)
既視感なんてレベルじゃない。俺が昨日まで、それこそ数千回、数万回と見てきた画面の中の光景そのものだ。
あの障壁は、『アビス・ソウル』の序盤にある《試練の門》だ。
正攻法でぶつかれば、核兵器を持ち出したところで傷一つ付かない。
これは「力」で通る門ではなく、「正しい手続き」を求めるギミックなのだ。
俺は、無意識のうちに歩き出していた。
「おい、君! 何をしている、戻れ!」
警官の制止をすり抜け、俺は黄色いテープを跨ぐ。
「……遅刻しそうなんだよ。いい加減にしてくれ」
独り言を漏らしながら、俺は障壁の前に立った。
一斉にカメラのレンズが俺を向く。
SNSの生配信では
「自殺志願者のサラリーマン現るw」
「バラバラになるぞ」といったコメントが弾幕のように流れているだろう。
俺は目を閉じた。 頭の中に流れるのは、ゲームの攻略ログ。
一歩、左。
二歩、右。
その場で回転。
そして、特定のタイミングで――。
「《ジェスチャー:深淵を覗く者》」
俺は障壁に向かい、両手を広げて独特のポーズを取った。
周囲からは失笑が漏れる。だが、次の瞬間、世界が震えた。
ズゥゥゥン……!
あれほど屈強な男たちを弾き飛ばした障壁が、水面のように揺らぎ、吸い込まれるような隙間を作った。
「え……?」 誰かの間抜けな声が聞こえた。
俺は、背後の混乱を振り返ることもなく、その闇の中へと足を踏み入れた。
霧を抜けた先。そこには、崩壊した中世の城塞が広がり、紫色の月が浮かんでいた。 足元には、錆びついた一本の剣。
「……会社は、まあ後でいいか」
俺は剣を拾い、不敵に笑う。
ここから先は、俺が世界で一番詳しい「庭」だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます