ルルはいつも尻尾を振る
黒猫280号
第一章
ルル。
真っ白でちっちゃくてふわふわなわんこ。3歳の女の子。
それは、千夏の家に迎えられて、千夏の相棒になってから3年が経つということ。
千夏が犬を飼いたいと言ったから千夏のパパとママが誕生日のサプライズに贈ってくれた小さな命。
それから毎日、ルルと千夏は一緒だった。
高校から帰ってきた千夏をルルが玄関でリードを咥えて待っていて、千夏は制服から私服に着替える暇も惜しんで散歩に行く。千夏とルルの日課だ。
そんな1人と1匹の大事な日課に最近、小さな異変が起きた。
散歩の途中のふとした瞬間。
“ぺた…ぺた…”
よぅく耳を澄まさなければ聴こえないくらい小さな音が混ざるようになった。
“ぺた…ぺた…”
まるで“ナニか”が“裸足”で歩いているような…そんな“足音”。
夕暮れ染まるいつもの散歩道、千夏とルルの大事な時間。そこに混じる“異音”。
最初はほんの小さな、雑踏に紛れてしまいそうなくらいのソレは、千夏が気付いてからというもの少しずつ、少しずつ大きくなってきているような気がしていた。
赤子が両手を前に出して覚束ない足取りでよちよちと歩いてくるような動きが日を追うごとにしっかりとした足取りになって…成長している。
成長しながら、付いてきている。
ひんやりとした冬の外気、足元を照らし出すのは、薄暗い街灯だけ。
(…気の所為、何かの音がそう聞こえてるだけ)
千夏は強くそう思い込むことにした。ルルもいるから大丈夫、なんて。その何かが何かなんて、明確な答えも出せないくせに。
「行こ、ルル」
気持ちを明るくさせようと千夏はわざとらしいくらい明るい声でルルに一声かけて歩き出す。
後ろは見ない。見ない。
…だから、千夏は気付かなかった。
ルルの歩くテンポが一拍遅れたことに。
その一拍のズレで、ルルが一瞬黒黒としたつぶらな目で後ろを向いて…尻尾を振ったことに。
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