VHSの内容(前)

 ――酷いノイズの後、唐突に画面が切り替わる。晴れ渡る空にどこか海辺のペンションらしき場所で、テラスに女優が座っている。明るい茶髪に細眉、チェックのミニスカート、ルーズソックスの典型的な女子高生スタイルだ。


「緊張とかしてますか?」

「ええ、でもちょっと、緊張とか、普通しますよね」

「こういうのは初めてですか?」

「初めて、っていうか、ああ、初めてです」


 ――カメラがセットと思われる室内を映す。開放的なテラスからビニールで出来たエアベッドに画面が切り替わる。すぐにカメラは女子高生を映す。


「どんな子供時代でしたか?」

「うち、母子家庭だったんです。お父さんいないから、お母さん毎日働いて。それで私もお母さんラクさせたいな、って思って、そしたら友達がめっちゃ稼げるよって、教えてくれて」

「それは大変だったねえ」

「でも、うちのお父さん河童なんで」

「は? 河童? 河童って、あのきゅうりとか食べる?」

「そうです、その河童」


 ――カメラが一瞬ブレる。女子高生は変わらず笑顔を浮かべている。


「えっと、その話、ちょっと詳しく聞かせてもらっていい?」

「いいですよ。別に恥ずかしいことじゃないですから」

「えっと、お母さんとお父さんはどうやって?」

「これよく聞かれるんですけど、なんかお母さんが川にいたら、お父さんがやってきてめっちゃヤったらしいですよ。アオカン、って言うんですか?」

「ああ、ええと、そうじゃなくて。その、河童ってどこにいるの?」

「川にいますよ。うちの裏の川。お母さん、そこでたまにお父さんに会ってたって」

「ええ、でも……河童って、怖くないですか?」

「まあ、めっちゃ怖いかもしれないですね」

「ミドリちゃんは怖くないの?」

「河童ですけど、お父さんですから」


 ――ミドリと呼ばれた女優、撮影クルー共に笑いに包まれる。


「河童二世のミドリちゃんに聞くんですけど、やっぱりアソコは普通なんですか?」

「さあ。他の人のよく見たことないけど、普通に人間だと思いますよ」

「じゃあ、見せてくれる?」

「ええ、そんな急に来るんですか? 河童なんで、大事にしてくださいね」


 ――一同、再び笑いに包まれる。


「それじゃあ、ちょっと見せてもらおうかな……足の先は……普通だね」

「あっ、いきなり来る感じですか? え……」

「緊張してる?」

「ちょっと、怖いかも……」

「でも、ミドリちゃん可愛いから、河童っぽいところ見せて」

「え、無茶ぶり(笑)」

「(笑)」


 ――男優がミドリとキスをする。濃厚なキスシーンに合わせて、男優がミドリのブラウスに手を入れる。


「河童の唇、こんな味なんだ」

「他の女の子と違いますか?」

「一緒、いや、普通よりおいしいかも」

「私、嫌ですか?」

「そういう不思議ちゃんは大歓迎だよ」

「私、もしかしたらエッチして卵産んじゃうかもしれないですよ」


 ――再びカメラが一瞬ブレる。


「河童って卵で生まれるの?」

「はい。私はお母さんが人間なのでお母さんのお腹で育ったんですけど、河童のメスは卵を産むんです。だから、私も卵を産むかもしれないです」

「(笑)」

「そうしたら、どうすればいい?」

「責任とってください」

「(笑)」


(以下女優を脱がせて、エアベッドに誘導するシーンが続く)

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