第5話

 翌朝になり、日も登った。人間の姿に戻ったミロを探さないといけない。熱は下がったけど、鼻水が止まらない。重い体を持ち上げて、一階に降りると、兄さんが身支度していた。


「はくしょん。」


「ソニヤ、風邪は大丈夫か?ギルドにミロを保護したという冒険者が来ているそうだ。迎えに行ってくる。」


「良かったわ!私も行く。」


「お前は寝ていろ。俺が預かってくるから。」


「で、でも。」


 兄に言われて一人留守番をしているが、なんだか落ち着かない。そうだ。ミロが好きなホットミルクでも作ってあげよう。きっと一晩中鳴いて疲れているだろうから。


 ミルクをコトコト煮ていると、なんだか外が騒がしい。火を止めて、カーテンの隙間から外の様子を伺う。黒い獣耳に、黒い尻尾の冒険者がミロを抱いて、兄さんを睨みつけている。


 私はその男に見覚えがあった。間違いない。連続殺人鬼『レーヴィ』だ。兄さんの獣耳が左右に大きく開いて、横にぺたっと倒れている。めちゃくちゃ警戒しているけど、レーヴィは兄さんより頭一つ背が高い。明らかにレーヴィに押されていた。


「パパ、お家はあそこだよ。」


 いつの間にあの男、ミロを懐柔したんだ!?そう思ったけれど、ミロとレーヴィは初めて会ったはずなのに、誰がどう見ても親子そのものだった。


「ソニヤに会わせてくれ。ここにいるんだろう?匂いで分かる。彼女は俺の番なんだ。俺が不甲斐ないばかりに逃げられてしまった。でも俺たちの間には多分誤解がある。子どもがいるなら、なおさらちゃんとしたい。」


「ミロを保護してくれて助かった。でもソニヤは今体調が悪い。とても人に会わせられるような状態ではない。それに君は……。」


「ママ!」


 私がカーテンの隙間から覗いていることにミロが気づき叫んだ。兄さんでは埒が明かない。私が会って話すしかない。幸い、鼻が詰まっていて彼の匂いが分からない。冷静でいられると思った。


「ゴホゴホ。兄さん、ミロを迎えに行ってくれてありがとう。」


「ああ、ソニヤ。お前は部屋に戻っていろ。俺がなんとかするから。」


「ママ!森でよく分からなくなって、吠えていたら、パパが助けてくれたんだ。パパも狼だったんだ。」


「うん、そうね。ミロ。」


 ミロはレーヴィの腕をすり抜けて、私の胸に飛び込んで来た。自分で噛んでしまったのだろう。腕に噛み傷があった。


「ソニヤ、会いたかった。俺の運命の番。」


 問題はこの男だ。運命の番と言っても、所詮一晩だけの関係。匂いさえ感じなければ、何とも思わない。


「今日は、ミロを助けて頂いてありがとうございました。お話は中で伺います。」


「おい、ソニヤ。」


「兄さんも一緒に話を聞いてもらえる?」


「わ、分かった。」

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