第22話「機能」
「あきらさんは、そもそもAIというものを使ったことはあります?」
「メシ屋の場所だとかまでのルート検索なんかに使ったことはある」
少しだけ遠回りな話をされた。
ただ、何処となく未来ちゃんは話しにくそうな雰囲気だし付き合うべきだろう。
「便利、ですよね、AI」
「ああ、確かにそう思うよ。でも、プログラミングコードとか出力してくれないかなって何度思ったか」
「そう、ですか。じゃあ、本当にコードなんかも出力してくれたら、使いますか?」
「……なるほど」
言いたいことがちょっとわかった。
「自分の存在意義を揺るがしかねないっていう不安か」
「……はい。今のAIは凄いです、多種多様なニーズに応えてくれます。それこそ、専門職の役割を奪いかねない程に」
あまりSNSなんかをやらない俺でも聞いたことがあるな、機会に仕事を奪われるんじゃないかって論争は。
「いえ、話が逸れましたね。そんなAIをあきらさんはどう思いますか?」
「情けない話だけど、今のちょっとした話だけでゾッとした部分はある。だけど……そうだな、感情的な部分を除いてもやっぱり、便利なツールだと思ってるよ」
そう言うと、何故か未来ちゃんは少しだけほっとしたように肩の力を抜いた。
「やっぱり、あきらさんはあたしの推しです」
「どうしてそうなった」
「いえ、それはもう揺るぎませんし置いておいて。あたしも実際にAIを使ったことはあります。もちろん、お話を出力させると言う使い方ではなく、一区切り書けたら評価してもらったり、単純に感想を貰ったりという壁打ち的な使い方を」
……ほっとしたのが少しだけと感じたのはここかね。
「少なくとも俺は、どんな形であってもAIを利用するという面を悪だとは思ってないよ。使っていたって言う未来ちゃんへのリスペクトは一切陰らない」
「しゅき」
「……いやそう言うのいいから」
「ごめんなさいでもしゅき。抱いてください本当に」
琴線に触れ過ぎたらしい。
ともあれ、AIを使うと言う部分に少なからず引け目と言うか負い目を感じているわけだ未来ちゃんは。
時代と言うべきかな、SNSが賑わって色々な情報が勝手に入手できるようになって。
とりわけAIを利用するということに対する意見は二分化し、やっぱり悪だと叫ぶ方が少なくとも目に留まりやすく心に入り込みやすいから多方面に影響を及ぼしてしまう。
「ともあれ、だ。話を戻して良助さんが手がけたイラストにAIが使われているんじゃないかって疑惑が出たんだな?」
「あたしと違って、というのもアレですけど。そこそこ有名でしたからねサカキさんは。実際売れたゲームのクレジットに名前が入っていることも多かったですし」
それは俺も知っている。
というか、フォルトゥリアを製作するにあたって実績やイラストの出来栄えを見て唯一こちらからオファーをかけた人間だ、知らないわけがない。
俺や未来ちゃんは募集に応募した形だし、サウンド担当さんもそう。
唯一外注として現場に来なくても納品だけでOKって扱いの人だった、のにもかかわらず。
「あんなイラストに熱意ある人が自動生成に頼るわけないよなぁ」
「同感、です。あたしの設定をイラストにちゃんと反映したいって現場に乗り込んでくるような人が、自動生成を自分で描いたなんて詐称、するとは思えません」
そう、良助さんは事あるごとに製作現場に乗り込んできた。
それこそフィールドグラフィックなんかもちゃんと皆でって現場のPC使って作っていたし。
……あぁ、でも。
「そう、そうなんです。あたしたちは、肝心のイラストを描いているところを、見た事が無いんです」
「そしてAI出力の絵は、コマンドを打ち込むことで出力される」
イラストに反映すべく設定を聞きに来るっていうのは、そう言うことなのかもしれない、と。
「だ、だから、その……」
「しょーもな」
「へ?」
「あ。ごめん、未来ちゃんの心配をくだらないって言ったわけじゃなく。そうだな――」
確かに権利的な部分の問題ってのはデリケートだ。
AIを利用するにあたって、あるいは機能的な部分の発展性を鑑みて将来的にどんな問題が出てくるかを予想したり、備えることはとても大切なことだと思う。
ましてやAIで生成されるイラストなんかは、何処かで学習されたものが反映されているから、その辺りで慎重に、あるいは敏感になることは大事な部分だろう。
しかしながらである。
AI利用、使用の是非は今回まるきり関係のない、ずれた位置にあるゴールポストだ。
「良助さんってさ。フォルトゥリア製作でいらない人だった?」
「そんなことありません! あたしの絶対的な推しはあきらさんで揺るぎませんが! サカキさんはクリエイターとして尊敬に値する人です!」
「おまけみたいに言うと説得力ないね? いやいや、それでもそうだろう? フォルトゥリア作ってる時に良助さんって絶対的に必要な人で、いわば機能だったじゃないか」
「それは、もちろんそうです。あたし含めて、サカキさんのイラストに惚れ込んでいるのは揺ぎ無い事実ですし」
ぶっちゃけ俺たちこそが良助さんをAIみたいに使ってた節すらある。
ここちょっと髪の色がーとか、胸の大きさが―とか、岩の質感が―とか気軽すぎるくらいに相談してたし? 思い出すだけでほんと甘えまくってごめんなさいだよ。
そんな頼りに頼った相手が仮にAIを一部利用していようとも、AI相手が如く働いてもらっていた俺たちとしては何も言えんだろう常識的に考えて。
「俺たちにとっては絶対に外せないキーマンで、フォルトゥリアを語る上で絶対に必要な人。その評価と信頼が揺るがない以上、周りの声を気にする必要があるか?」
重ねてAIに関する肯定的、否定的な意見は出て然るべきものだ。
だが、使用していようが使用していまいが、俺たちの良助さんへの根幹は揺るがない。
それこそが少なくとも俺にとって一番大事な事であり、ゴールの場所だろう。
「はー……あのあの、あきらさん」
「え? うん、どうしたの?」
頭の中にある良助さんへごめんなさいしていれば、何か服の袖をくいくいと未来ちゃんがして来て。
「ほんっとあきらさんって、クリエイターたらしですね? そういうところですよ?」
「ごめんちょっと意味がわからない」
いやほんと意味わかんないけどさ。
「どっちにしろ俺の仕事は変わらないしな。良助さんがバグを引き起こすようなことをしてたのなら修正する。そうじゃないならお話して一緒に現実へ帰る。それだけだ」
「はいっ! それだけ、ですね!」
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