Unleash Lab 〜原因不明の不調を診断します〜 3.母を求めて…

@hachio_haru

プロローグ

「先生、SNSでクリニックのお知らせとかしないんですか?

ホームページとか?」


「いやー、あんまり患者さん来てほしくな……

ゥォホン。

んー、んー、なんか喉の調子が……」


そう言って、御門先生は首を傾げながら咳払いをした。


(仕事、したくないのね……)


思わず白い目を向けてしまう。


「花村さん、

『あなたの原因は幽霊です!』って言って、

みんながみんな信じると思う?

心から成仏したいと願った霊が、

ここに連れてきた人じゃないと、

普通は怒るでしょう……」


御門先生は、このクリニックの診断医だ。

陰陽師の末裔らしく、医療とは違った方法で病気の根本を探し当てる。

辛く苦しい思いをしている人を、心から救いたいと願っている心優しき先生。

私を救ってくれた、尊敬する先生……(?)


辺りには桜が咲き始め、日差しも暖かく、人々の背中を押している。

「スタート」と言っているように、植物たちも鮮やかになり、心が踊る。



(今日も掃除と植物のお世話、ハーブティーの在庫管理で一日が終わるなぁ……)


そう思っていたら、

「ガチャ」

と、ドアがゆっくりと、そしてためらっているのか細く開いた。


中を伺うように少女が顔を見せる。


「あの…、ここはメンタルクリニック…ですか?」


「こんにちは。

はい。ここはメンタルクリニックであっていますよ。」


私は問診票のバインダーを手に取ると、彼女に

「お座りになって、こちらをお書きください」

と言って渡した。


問診票に視線を落とし、しばらくそれを見つめてから、受け取る。


椅子に腰掛けると、はじめは目線だけを左右に動かしていたが、

やがて何かを書き始めた。


スッと立ち上がり、問診票を提出する。

身体中からこちらに心を開くつもりがなさそうな、疑うような目をしていた。

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