第9話「あっという間に知らない世界」

光が徐々に収まってくると

今度もまた白い世界


違うのは、さっきまでのおねえさんではなく

目線の先に、私より若いどころか

中学生くらいの女の子が居た


それもソファーに寝転がって


『すー、すー、すー』


・・・もしかして寝てる??

規則正しい呼吸音がして、全く動く気配はない


ところで、今回も後輩は無事?


廻りを見渡そうとしたら、腕を引っ張られた

良かった、実体は有るみたい


おねえさんもおねえさんだよな

多分、転移させられたんだろうけど

いちいち真っ白な風景だけの所に出れば


『死後の世界は~』


って、大昔よくあったっていう怪奇番組の

いわゆる【あの世】、って奴みたいで、ちょっとドキドキしたよ


後輩と。顔を見合わせる


「起こしたほうがいいかな?」


「彼女が管理者ですよね?多分

起こして確認しないと、仕事にならないんじゃ?」


少々思案してから、後輩に


「えっと、俺が起こすと事案になりかねないから

お願いできる?」


と、頼む

アラサーの男が、JCの寝込みに声掛けってのは

絵面的にあまりよろしくなさそうだからね


彼女は優しく肩を揺すってみた

「すみません、起きていただけますか?」


・・・・・起きないね


「あのー、起きてください」


・・・・・起きない

5回繰り返しても、ピクリともしないので

しびれを切らしたのか



この子

こんなに声張れるんだね


流石にJC起きた


長ぁいプラチナの髪が、肩から滑り落ちる様は

すっごく綺麗


ただ、その顔はなんか不貞腐れてる


『誰だい、君たちは?なんで起こしたんだいぃ?』


声まで不機嫌

かわいい声なのに、ドス効かせてしゃべってるから

余計に不機嫌が目立つ


「すみません

おねえさんから、こちらの世界の選定者に選ばれたから

行って来いって言われました

あなたが、こちらの管理者さんでいいんですか?」


端的に伝えてみる


ぱぁっと顔が明るくなって、にこやかな声質に変わる

分かりやすく、機嫌が治ったのは何より


『そっか、君の言うおねえさんは

多分、君たちの【世界】の管理者のことだねぇ?


あの方が決めた選定方法で、選ばれたなら

こっちの世界で、いろいろしてくれそうだねぇ

期待してるよぉー』


明るく言うけど、こっちはまず確認することが

山ほどあるんだよね


「結局、細かい話やこちらの世界の諸々は

こちらで確認してくれ、ってことでしたので

一通り教えていただけますか?」


間髪入れず答えた


『えー、面倒だよぉ~~~~』


なんでだよ!!!


『そういうことは、サポートシステムがあるから

そっちに聞いてよぉ』


「じゃあ、それ、使えるようにしてください」


『え?もう使えるはずだけど?

サポートシステムを起動してごらん?』


「どうやって?」


『ええ?サポートシステム起動ってボタン、ないかぁい?』


キョロキョロして見回すが、どこにも見当たらない


「見えません

てか、操作盤とかモニターとか

そういうのどこにも見当たりませんけど?」


後輩も見回してるけど、やっぱり見えないみたい


『おっかしいなぁ

君たち、普段どうやって魔法とか使ってるんだぁい?』


???


「あのー、私らの世界じゃ、魔法なんてなかったんですけど?」


JCはキョトンとした後

大げさなくらいの驚愕を表情に出してきた


『そんな!!魔法が使えない世界??

あっちには魔法ないのかぁい??』


聞いてないよー!って

3人組の伝統芸が、後ろに見え隠れするようなうろたえ方で

明らかに挙動不審になってきてる


「えっと、なにかまずいことでも??」


二人でJCを見つめ、答えを待つ


『まずいというか、そもそもベースシステムが違うと

そこを合わせていく必要があるねぇ


その上で、世界観をはじめに言語とか宗教とか、

自然環境とか、生物学とか教えないといけないけど

時間もかかるし、教える範囲が広すぎるよねぇ』


JC、早口で一気にまくし立てる


3年で世界を変えて、って言われてるけど

覚えるだけでどんだけ時間食うんだか


『そうなんだよねぇ

君ら二人に、基礎知識教えるだけで

1年くらいかかちゃいそうだねぇ』


あ、JCも心が読めるのね


『そうそう、衛生環境とかなんとかもそうだよぉ

君らの世界レベルには、まだ届いてないからねぇ』


後輩の心も読んだのか


「でしたら

私らに教えてくれる、すべてを知る師匠みたいな人を

つけてもらえたりしませんかね?」


JCの返答を足掛かりにして、後輩は要求を明示してる


「あとは、実務ができる人をそれぞれ1名ずつ

その下に実働部隊として必要人数


そうでもないと、現場どころか世界観すら無知のままだから

あっという間に期限来ちゃう気がします」


そこで一息ついたと思ったら、思い出したように続けた


「あ!

あと高レベルのモノづくりができる人

言語を複数使える人

交渉力が高い人!


一般常識からなにからわかる人!

ついでに女性でそういうのができる人も!」


後輩が、矢継ぎ早に追加要求する


本当はちゃんと業務分掌やって、それぞれに決めてくんだけどね

そもそも、その業務範囲すら果てが見えないんだよな、今現在だと


『だったら、まずは知識と知恵がある人を、創ろうかねぇ』


・・・・・作る?

いや、JCの声のニュアンスは、違う感じがした


『君の「作る」じゃなくって、文字通りの「創造する」んだよぉ』


・・・・・創造する?

それって、人を創るってことなのか?


『一応この世界の管理者だからねぇ

ゼロから世界は創れないけど

世界があれば、アイテムは創れるんだよぉ』


そう言いながら、手のひらを合わせる

再度広げると、掌の間に何とも言えない光り方の

球体が現れた


『これは。この世界で真理を追究し。

「賢者」と呼ばれた人の魂だよぉ


この人に、君たちを導くようにお願いしてみたら

了承してくれたから、来てもらったんだよねぇ


でも、この人でもせいぜいが100年200年の世しか

知ったわけじゃないから、ちょっと待っておくれねぇ』


そういってさっきと同じような仕草を取って

今度は掌の間に虹のように、光の色が入り混じる

球体が現れた


『これは、先代の妖精の長の魂だよぉ


ただ、こっちは妖精頼りで情報収集には

めっぽう強いけど、人の世の常識や知識には

疎いんだよねぇ


だから二人で分担、ってことじゃだめかなぁ?』


え??妖精?

魔法とか魔術の上に、妖精??


『そうかぁ、あっちの世界に妖精もいないのかぁ

魔法や魔術も教えてもらって身につけないと

そもそもこっちで生きていけないよぉ?』


思ったより、ハードモードじゃないか!

それでも、サポートが万全に近くなるなら

まずは何とかできる・・・・・・か?


『どうだろう?

この二人をサポートとしてつける、ってことでいいかなぁ?』


「もう一人!生活そのものをサポートできる人

ってつけてもらえませんか??」


後輩が追加を申し入れた


『生活ってぇ??』


JCが聞き返す


「食べ物の選び方から、洗濯とか風呂とか寝るのとか

自分らの仕事以外のことを教えてくれるなり

手伝ってくれる人が欲しいです!!!!」


洗濯、風呂、睡眠は大事だよねぇ、日本人には


そして、食べ物は生きる上で必須だよね

見た目からなにから、日本の知識があてはまらないかも

しれないし

ヤバイもの食ったり飲んだりして、ゲームオーバーじゃ、嫌だもん


『じゃあ』


3度目の掌合わせで、今度は黒い球体が現れた


『これはねぇ、ある権力者の執事として仕事をしてた人だよぉ

この人なら生活サポートも十分してくれるんじゃないかなぁ?』


師匠が3人でサポートか

後輩も満足そうにうなずいてるから良しか?


『ちなみにモノづくりができる人

ってのはほぼ無意味なんだよねぇ


この【世界】には作る

って、概念そのものがほぼ欠落してるからさぁ』


さらっと言っていいほど軽微な問題点じゃないよね?


「こればかりは、歴史の積み上げだから

現状、どうしようもないねぇ


これでよければ、3人の魂を

この世に復活させるよぉ


どういう体にするかは二人に任せるから

それぞれ、想像してみてくれるかなぁ?』


「外観だけ?性能とかも?」


聞いてみる


『性能って、機械じゃないんだからさぁ

一応人間をイメージして考えてくれるかなぁ?』


う~ん

賢者、妖精、執事ねぇ


おじいさん

小さくて喧しい女の子

ダンディなおじさま


定番っぽいのはそんな感じ?


そんなことを思ってた隣では

後輩が真剣に考えてる


『そろそろ、イメージができたみたいだねぇ?』


後輩が、どういう姿をイメージしたかわからないけど

すり合わせもしないうちに、JCが言い出した


「ちょっと、二人で話あってもいい?」


と、言ったのだが


『二人の考えを読み取るからさ

イメージの強いほうが、能力にも反映されるから

話し合っても意味ないよぉ?』


だそうだ


仕方ない

そのままお任せにしよう


『では創造するねぇ』


JCはそういって、両手を前に突き出した

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