第二話

 鳥御門家とりみかどけの人間に恋愛結婚など、望めるはずもございません。


 わたくしどもが産む卵は、『鳥御門の卵』として世に知られ、人間にとっては万病を治す貴重な薬とされております。


 実際には重症・重病は癒すことはできないのですが、それでも十二分に巷の薬などよりはよほど効果があるのです。


 この卵の存在をもって、鳥御門家の栄えがあるのでございます。


 当然、この貴重な卵を産む女子を、鳥御門の外に出すことはならず。

また、鳥御門には男児は生まれない為、人間の殿方を鳥御門に入れるのでございます。


 まさに、わたくしどもは籠の中の鳥。

これは、鳥御門家に産まれた女子の、運命でもあり、務めでもあるのです。


 恋というのは、それこそ絵空事でございました。


 またわたくしどもが屋敷の外に出られないのは、わたくしども鳥御門の女子の異形を、世に知られぬ為でもございましょう。


 この姿を見ては、屹度きっと、あの方も恐れ慄くに違いありません。


 ですからわたくしは、いつも、どこぞの屋根に降り立って、遠くからあの方を見るにとどめていたのです。

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