第23話 黒魔術を極めし者

オレたちが国境の峠を越えたとたん、木々の間から、突風と共に現れた影――。


「……風の中に何かいるッ!」


次の瞬間、前方の岩の上に5体の獣が姿を現した。体毛が風にたなびく、銀色の狼たち。


<i948686|4583>


名前:エアーウルフ

体力:128

攻撃:68

防御:65

素早さ:125


この世界で風をまといし狼の魔物。素早い動きと連携で獲物を仕留める狼モンスター。



「群れで来やがったか……!」


アルベルトがすばやく剣を抜いた。


「気を抜くな!囲まれるぞ!」


だが、エアーウルフたちは人間の反応速度を上回る動きで左右に分かれ、視界の外から襲いかかってくる。


「くっ!速すぎる――!」

俺は木の剣を振るが、風のような動きにかすりもしない。


「右からくるわよ!」

シスターマリアが叫ぶと同時に、一匹のウルフが牙をむいて跳躍――!


「グァッ!!」

アルベルトがかろうじて剣で受け止めるも、もう一匹が背後から回り込んでくる。


「まずい、このままじゃ数で押し切られる……!」


そのとき、後方で聞こえる落ち着いた声。


「なんかイライラしてた気分がスッキリしましたわ。」


え?


振り返ると、マーリンが冷静に杖を掲げ、魔法陣を展開していた。


「マーリン!? 今それどころじゃ――」


「赤き破滅の炎よ、我が命を糧として顕現せよ──灼き尽くせ、世界の理(ことわり)ごと!」


「《爆裂魔法・クリムゾンフレア》!!」


その瞬間、大地が鳴動した。巨大な魔力が一点に収束し、まるで空間がねじれたかのような圧力が周囲を包む。


「滅びろ世界の終焉のエピローグ!!」


爆心地に魔力が集中し、次の瞬間――


<i948688|4583>


巨大な魔力が一点に集束したあと、暴発するように爆裂。爆心地から赤い閃光が放射状に広がる。


ボゥッ!!ゴォォォォオオ!!!ゴォォォォオオ!!ゴォォォォオオ!!


燃え上がる炎が一気に広がり、空気ごと焼き尽くす。まるで世界が燃え始めたかのよう。


俺たちは声も出せず、ただその場に立ち尽くしていた。


「これが……黒魔術師の、力……?」


「……反則だろ、これ……」


アルベルトすら目を見開き、剣を下ろしていた。


(町一つ焼き払える……いや、下手をすれば王都だって……)


そして、なにより――


「フフ……スッキリしましたわ」


マーリンは、まるで散歩から帰ってきたかのように、満足げな笑みを浮かべていた。


俺の背中に、ぞくりと冷たいものが走る。


(――こいつ、いつか手がつけられなくなる)


(この力は、もはや味方のそれじゃない)


笑っているマーリンの、その横顔に、俺は確かに“狂気”を見た。


戦いのあと、俺は提案した。


「このままふもとの町に寄るのはやめよう。バルドルが動き出す前に、次の港町へ向かうべきだ」


マーリンは小さく頷いた。


「なるほど、バルドルがこの町で勇者散策を始めるから……先を急ぐのですね。素晴らしい案だわ」


俺はその言葉にどこか引っかかりながらも、うなずいた。


マーリンという存在に対する、不安と恐怖が確かに芽生えていた。

(新しい、まともな仲間が欲しいです。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る