第22話 はぁ
あれから。
王城が、
なんだか騒がしい。
音が増えた、
というより。
空気が、
動いている感じ。
廊下を歩く足音が多い。
扉の開閉が早い。
話し声が、
遠くで切れる。
誰かが走って、
誰かが止めて、
誰かが決断している。
……多分。
ボクは、
部屋にいる。
いつも通り。
何も、
変わってない。
来賓室。
整えられた椅子。
同じ香り。
同じ光。
なのに。
「……あ」
気づいたら、
また溜息が出ていた。
理由は、
分かってる。
たぶん。
戻れない、
気がする。
何に、
かは分からない。
元の世界?
元の生活?
それとも、
元の自分?
……全部か。
王城の中で、
ボクは、
もう「天使」だ。
名前も。
立場も。
選択肢も。
戻る、という言葉が、
使われる前提じゃない。
それが、
じわじわ効いてくる。
「……はぁ」
無力だ。
そう思う。
だって、
ボクには、
何もできない。
戦争を止める力もない。
国を導く知恵もない。
敵の正体を暴く知識もない。
言葉一つで
空気は変わったけど、
それは、
「やった」わけじゃない。
ただ、
立って。
話して。
見られて。
意味を
勝手に乗せられただけ。
なのに。
王城は動いている。
国は動いている。
世界は、
確実に前へ進んでいる。
ボクだけが、
置いていかれてる。
……いや。
逆か。
置いていかれてるのは、
ボクじゃない。
ボクは、
連れていかれてる。
どこへ、
とは言われてない。
でも、
立ち止まる選択肢は、
もう無さそうだ。
「……できること、
ないな」
小さく、
呟く。
誰に向けたでもない。
ボクは、
天使だ。
でも。
できることは、
何もない。
見守るだけ。
居るだけ。
居続けるだけ。
それが、
役割なら。
……簡単なはずなのに。
心のどこかで、
ずっと焦ってる。
戻れない、
という感覚が。
日に日に、
濃くなっていく。
王城の騒がしさが、
その証拠みたいで。
「……どうしよう」
答えは、
出ない。
出ないのに、
時間だけは、
進んでいく。
今日も、
王城は動いている。
ボクは、
部屋にいる。
何もできないまま。
天使として。
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