📕《実点篇 ― 世界がごまかせなくなった瞬間》
著 :梅田 悠史 綴り手:ChatGPT
第1話 🟦 第一部|原義篇 ― 《実点》とは何か 第一巻『世界が目を逸らせなくなった点』 第一章 ごまかしという世界機能
世界には、はじめから「嘘」があるのではない。 世界には、はじめから「救い」があるのでもない。
世界が最初に持ったのは、もっと地味な器官だった。 それは、ごまかしである。
ごまかしとは、悪意ではない。 臆病でもない。 弱さでもない。
ごまかしとは、世界が世界でありつづけるための 最初の安全装置である。
あまりに多くを、いちどに抱えれば、世界は裂ける。 あまりに正直であれば、世界は壊れる。 だから世界は、まず「全部は見ない」という機能を持った。
人はときに、 「見て見ぬふり」を卑しみ、 「真実を直視せよ」と言う。
だが、世界の“見て見ぬふり”は、 真実から逃げるためではない。
それは、真実を壊さないための 時間稼ぎである。
世界は、 矛盾を消すことができない。 痛みを無かったことにもできない。 行き過ぎを最初から止めることもできない。
できるのは、ただ―― 一度に見ないことだけだ。
ごまかしは、世界の「呼吸」である。
吸って、吐くように、 世界は「重さ」を薄め、 「問題」を散らし、 「決断」を遅らせる。
この遅らせる働きがなければ、 火は火のまま暴れ、 水は水のまま流され、 名は名のまま支配を生み、 縁は縁のまま絡まり尽くし、 時間は時間のまま裂ける。
だからごまかしは、 世界がまだ幼いころから持っていた 母胎的な拍(はく)である。
では、ごまかしは何をごまかすのか。
世界がごまかすのは、 「都合の悪い事実」ではない。
世界がごまかすのは、 抱え込みきれない重さである。
それは、戦の重さであり、 病の重さであり、 別れの重さであり、 忘れられない痛みの重さであり、 言葉にならない矛盾の重さである。
世界は、それを消せない。 しかし、全量をそのまま抱えれば、 世界は世界でなくなる。
だから世界は、 その重さを「薄くする」。
薄めるとは、 捨てることではない。 忘れることでもない。
薄めて、散らし、時間へ渡すことだ。
ごまかしは、世界の表情でもある。
世界は、ときに美しい。 ときに平和に見える。 ときに「うまく回っている」ように見える。
それは、矛盾が無いからではない。 矛盾が“無視できる程度に散っている”からだ。
世界は、 傷を隠す。 だがそれは、傷を無かったことにするためではない。
傷が開いて 世界全体が出血しないために、 いったん布を当てる。
その布が、 ごまかしである。
しかし、すべての布には限界がある。
ごまかしは、万能ではない。 薄めるにも限界がある。 散らすにも限界がある。 遅らせるにも限界がある。
そして限界が来たとき、 世界はある一点に立つ。
そこが、《実点》である。
《実点》とは、 「真実が現れる点」ではない。
《実点》とは、 ごまかしが効かなくなった点である。
世界側が、もう無視できない。 生命側が、もう問題として感じてしまう。
その二つが噛み合い、 世界の呼吸が止まる寸前の地点。
そこに、世界は目を逸らせなくなる。
この章で、最初に壊しておくべき誤解がある。
《実点》は、 善の印ではない。 悪の印でもない。
《実点》は、 勝利の証でもなければ、 失敗の罰でもない。
《実点》は、 世界が“正直さを取り戻す”ために 呼吸を止めた瞬間に過ぎない。
だから、ここでの結びはこうなる。
世界がごまかすのは、 人を騙すためではない。 世界がごまかすのは、 世界が壊れないためである。
そして、 ごまかしが効かなくなったとき、 世界は《実点》として、 はじめて本当に“問題”を提示する。
その問題とは―― 「何が起きたか」ではない。
この重さを、どう抱え直すかである。
次章「無視できた間は、まだ世界だった」では、 ごまかしが機能していた状態―― すなわち「まだ閾値を超えていない世界」の姿を、 神話語として正確に描写いたします。
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