第6話 深夜ダンジョン・眠らぬ街
夜の街に灯る街灯の光も、どこか頼りなく感じる。遠藤紘一は、深夜限定のダンジョン「眠らぬ街」の入口に立っていた。昼間は平穏な商店街が、夜になると無数の迷路と化し、暗闇の中でモンスターが徘徊する危険地帯になるという。
「……やっぱり、夜は雰囲気が違うな」
紘一は小さく呟き、懐中電灯を手に取る。昼間のダンジョンとは違い、光が届く範囲はわずかで、敵の姿も確認しづらい。視界の制限は、探索者の判断力を試す。社畜時代、夜遅くまで書類やデータに向き合った経験が、ここで活きる瞬間だ。
入口をくぐると、街の道路は暗く、影が伸びる。遠くで不気味な金属音や低い唸り声が響き、街全体が生き物のように動いているかのようだった。紘一は慎重に歩を進める。疲労管理も重要だ。長時間の探索で体力を失うと、回避や反応が鈍り、致命的な事故につながる。
「深呼吸……まずは状況を把握」
紘一は足元や建物の影、微かな音を頼りに敵の位置を把握する。夜間限定モンスターは光に敏感で、懐中電灯の光で動きを制御できることもある。しかし光を使いすぎると疲労が増す。ここでもバランス感覚が求められるのだ。
最初の敵は、闇に溶け込む小型モンスター。鋭い爪と素早い動きで、見えない場所から襲いかかる。紘一は瞬時に攻撃パターンを読み、懐中電灯の光で位置を確認しつつ反撃。暗視スキルと疲労耐性を駆使し、効率的に敵を倒す。
「夜は視界が狭いけど、動きのパターンを見極めれば怖くない」
奥に進むと、通り全体が迷路化していることに気づく。建物や路地が微妙に変化し、進むべき方向が分かりにくい。紘一は地図アプリを使うことなく、頭の中で地形を把握する。都市型ダンジョンで培った空間認識能力が、ここで役立つ。
さらに進むと、疲労の限界が近づく。深夜の寒さと長時間の探索で体力が削られる中、紘一は休息ポイントを見つけて軽く休む。社畜時代、休憩を最小限にして仕事をこなした経験が、逆にここでは効率的な休息の取り方を教えてくれる。
通路の先には、夜光を放つ大型モンスターが立ちはだかる。暗闇で見えにくいが、動きは遅い。紘一は光を使って敵を誘導し、建物の影に隠れて攻撃のタイミングを待つ。疲労管理と戦術的思考が試される瞬間だ。
「動きを読め……焦るな……」
数分間の攻防の末、紘一は敵を倒し、安全な通路を確保する。夜の迷路は、単純な戦闘力だけではなく、観察力と計画性、そして疲労管理が勝敗を分ける場所だった。
最深部に到達すると、街全体が暗闇に包まれ、静寂が広がる。しかし紘一は恐れず、光を前方に向けて進む。夜の街を支配するモンスターたちの視界を計算しつつ、慎重に足を運ぶ。光と影のコントロールが、彼の武器となった。
「これが……夜間ダンジョンか」
最後の障害を越えた瞬間、街の明かりが戻り、静かな深夜の街が姿を現す。遠藤紘一は深呼吸をし、肩の力を抜いた。暗闇の中での戦いは、戦闘力だけでなく判断力と体力管理の重要性を教えてくれた。
「さあ、次はどんな冒険が待ってるか……楽しみやな」
自由を手に入れた探索者の旅は、昼夜問わず続く。深夜ダンジョンで培った経験は、これからの挑戦に必ず活きる――そう胸に刻み、紘一は次のダンジョンへ歩を進めた。
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