『役立たずと婚約破棄された男爵令嬢、状態異常てんこ盛りダンジョン経営でうはうはです♡』

役立たずと呼ばれた私の城

役立たずと呼ばれた私の城

役立たず、と

そう言われた日の

空は、よく晴れていました

剣は振れない

炎も放てない

ただ

眠りを呼び

足を重くし

心を惑わせるだけの魔法

それが

「価値がない」と

決められた理由

追放された先で

私は

石の心臓に

そっと手を当てました

――ここで、暮らそう

毒は

殺すためではなく

「踏み込みすぎた一歩」を

思い出させるために

眠りは

逃げ道を残すために

恐怖は

生きて帰る勇気を

育てるために

誰も

死なない城

誰も

壊れない迷宮

ただ

無理をした人だけが

立ち止まる場所

いつしか

人は言いました

「あのダンジョンは

　やさしい」と

あの日

私を捨てた人たちは

まだ

強さを

奪うことだと思っている

でも私は

知っています

守ること

残すこと

続けることこそが

いちばん

難しく

いちばん

儲かるのだと

役立たず、と

笑った声は

もう

聞こえません

代わりに

今日も

金貨の音と

安堵のため息が

静かに

城に満ちていく

――うはうはです♡

そう

小さく笑って

私は

ダンジョンの灯りを

もう一段

明るくしました