第3話 檻の身体

明里は、よく食べる分、お通じも多かった。

大食いタレントと同じだ。入った分だけ、出る量も多い。


「ジャーーーーーー」


トイレから出た明里は、わずかに顔を歪めた。


(あれ? なんか……すっきりしない)


いつもなら、お腹まわりが軽くなる感覚がある。

その日は、なかった。


七号サイズのスカートは、相変わらず腹部に食い込んだままだ。


(健康診断があったから、バランス崩れちゃったかな)


珍しいことじゃない。

食事を抜けば反動が来るのは、誰にでもある。

昨日は断食の反動で食べすぎただけ。

溜まっているだけ――そう思うことにした。


仕事を終えて帰宅し、明里はいつものように、好きなだけ夕食を食べた。

衣服にかけるお金を削ってでも、食費だけは削りたくない。


食べることが好きだった。

しかも、太らない。


明里にとって、食べることは「生きること」そのものだった。


翌朝、ふと思い立って体重計に乗る。


(……47キロ。戻ってる!)


胸の奥が、ふっと緩んだ。

あれだけ食べたのに、健康診断の日より痩せている。


それだけで、十分だった。

数字が、すべてを肯定してくれる。


明里は今日も、決まった朝食をとり、何事もなかったように会社へ向かった。

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