檻の身体

余白

第1話 檻の身体

───あなたの体重は、何キロですか?





冬月明里(ふゆつき・あかり)、27歳。

職業は一般事務。


仕事は、楽しくはないが悪くもない。

一人暮らしを続けられるだけの給料はもらっている。

いつかは結婚したいと思っているが、今は恋人はいない。

――みんな、どこで出会っているんだろう。


人と少し違うところがあるとすれば、食べても太らないことだった。


毎食しっかり満腹まで食べても、子どもの頃から体重が増えたことがない。

身長158センチ、体重47キロ。

俗に言う「美容体重」。


「細いね」と言われることは多い。

けれど、特別なことは何もしていなかった。

運動は嫌いだ。できることなら、体育の授業さえ休みたかった。


明里は、毎日きちんと三食食べる。


朝は四枚切りの食パンに、たっぷりのバター。

健康のためにサラダも添える。

ドレッシングは、シーザー系が好みだ。


今日の昼食は、簡単に牛丼の大盛り。

スーツ姿のサラリーマンに混じり、カウンター席で食べた。

腹八分目を超えたあたりで、ようやく満足する。


夕食は、特に大切にしている。

大盛りのカルボナーラを作り、サラダも欠かさない。

脂肪も炭水化物も、遠慮はいらない。


美味しいものが好きだった。

太らないのだから、どれだけ食べても問題はない。


明里の毎日は、穏やかで、満ち足りていた。


ずっと、そう生きてきた。

――そう、あの日までは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る