自己犠牲エンドから生還した、大人気ヒロイン達が動けない俺をお世話してくれるけど負担になりたくないのでダンジョンマスターで食っていく〜「アタシのせいだ……」自責曇らせ魔法少女と異世界勇者が重すぎる〜
第1話 魔法少女担当官なんだけど、多分担当に嫌われている
自己犠牲エンドから生還した、大人気ヒロイン達が動けない俺をお世話してくれるけど負担になりたくないのでダンジョンマスターで食っていく〜「アタシのせいだ……」自責曇らせ魔法少女と異世界勇者が重すぎる〜
しば犬部隊
第1話 魔法少女担当官なんだけど、多分担当に嫌われている
魔法少女と結婚した先輩のち〇こは一晩で爆発した。
この事から学ぶべきは1つ。
魔法少女に感情移入すべきではない。
なぜなら彼女達は――。
◇◇◇◇
ある日、世界中に『ゲート』と呼ばれる異空間から魔獣と呼ばれる脅威が出現した。
魔力と呼ばれる未知のエネルギーを纏う魔獣に対し、人類は無力だった。
たった数年で20以上の国が滅び、人類は4割の人口を失う。
人類は存亡の危機を迎えた。
人々が自らの滅びを覚悟したその時――日本で、ある奇跡が生まれた。
中学生の少女5名による”魔獣・朝焼けの獣”の討伐。
奇跡のニュースは世界中を駆け巡り、そして同時期に世界中で魔力に覚醒した超人が生まれた。
人外の力を振るい、魔獣を屠る超人達。
全員が第二次性徴期を迎える寸前の少女だった故、人々はその超人達に日本のアニメから着想を得て、こう名付けた。
――魔法少女、と。
魔法少女達は、魔獣以上の魔力と1人1つの固有能力を駆使し、瞬く間に魔獣を殲滅し始める。
だが、そんな超人達にも弱点が存在する。魔法少女は無敵の存在ではない。
彼女達の弱点のケアや補給の為に世界が用意したのが――魔法少女担当官だ。
担当官は、魔法少女の相棒として共に魔獣の殲滅任務にあたり、日常生活も裏から彼女達を支える陰の存在。
と、いうのが大人気ソシャゲ――ブラッド・バレッド・ブリージア、通称BBBの設定だ。
俺はBBBの世界に魔法少女担当官、百梨 楽人ももなし らくひととして転生した。
……
…
「対象の全滅を確認。……つまらない仕事ね」
夜。
月明かりに照らされた無人のサッカースタジアムに彼女は1人佇む。
黒いゴシック衣装、頭には赤いフリル、フリフリのスカートに黒いニーソックス。
流れるような黒髪ロング、新雪のような肌。
夜と冬から生まれた妖精のような美少女。
可憐で静謐な雰囲気と裏腹に手に持っている武器はデカいノコギリとデカい銃。
魔力で生み出されたそれを彼女は一瞬で異空間に格納する。
彼女の周囲には魔獣の死骸が山のように積まれている。
魔法少女が誕生する前は魔獣10匹とは一国の軍隊に匹敵する脅威だった。
それを、返り血一つ浴びずに討伐したのは15歳の少女。
現代最強の魔法少女『
ユーラシア大陸を取り戻した現代英雄にして、俺の担当魔法少女の1人。
BBBでも環境最強キャラとしてユーザーに絶大な人気を誇っていたキャラ。
魔法少女アニメだと、クールな相棒枠。
戦隊ものだとブラックとかやりそうな子だ。
「……アンタ、今なんか変な事考えてなかった?」
相変わらず勘が良い。
誤魔化す為に、彼女のお気に入りのブランドものタオルを渡す。
返り血も、汗もかいていない彼女には不要だろうけども。
「フン……少しは気が利くようになったじゃない」
まあ、長い付き合いだしな、そう返すと夜行さんはため息をついた。
俺は彼女に嫌われている。
いや、彼女に限らず担当魔法少女には多分全員に嫌われている。
当然の事だ。俺は大人の癖に彼女達に守って貰っている卑怯な存在なのだから。
スタジアムから見上げる夜空には、月が2つ浮かんでいる。
あるはずのない2つ目の月。
あれが、総ての魔獣の根源――”月の獣”
月という天体に擬態した、宇宙に存在する魔獣。
現在、アレを倒す為の最終作戦の準備が全世界の総力を賭けて行われている。
「アレを殺せば、この忌々しい仕事も終わり、清々するわ」
俺との付き合いも終わりだしな。
そんな軽口を叩くと、彼女からは舌打ちが返ってきた。
彼女とは担当魔法少女の中で一番付き合いが長く、一番嫌われているのだ。
2人で月を見上げたまま、ふと夜行さんが口を開いた。
「……アンタ、”報酬”って知ってる?」
魔獣討伐に多大な貢献をしてくれた魔法少女達に、世界は報酬を用意した。
内容は『社会が用意できる範囲でどんな願いも叶える』
魔獣からユーラシア大陸を取り戻した英雄、そんな彼女が望めば、例え国だって手に入るだろう。
命がけで戦ってきた彼女達には当然の権利だ。好きなものを望めばいいさ。
「アレ、アンタの名前書いて提出したから」
「……………………ん??」
アンタノナマエ?
それじゃまるで、俺が報酬になっているように聞こえてしまう。
聞き間違いか。
「残念だったわね。アンタ、魔獣討伐が終わっても、私からは離れられないわ」
聞き間違いじゃねえな、これ。
俺が押し黙っていると……。
「……は? なんで沈黙なの? ああ、そうよね、こんな口が悪くて面倒くさい女に身請けされるなんて絶望だものね。アハハ。でも、残念。アンタは一生、私と一緒なの。これはもう決定事項なの、断れると思ってる? 」
夜行さんの魔力で、地面にヒビが入り始める。
かっけえ~。少年漫画みたい。
世界一危険な職業、魔法少女担当官。
その死亡原因の2割は、担当魔法少女が原因のものだ。
魔法少女とのコミュニケーションの失敗は死に繋がる。
「残念でした、魔獣との戦いが終わってもアンタはこの化け物とずっと一緒に――」
「君は化け物じゃない」
だが、俺はコミュニケーションのプロ。
こういう時の対処法は頭に入っている。
怖気れば、人は死ぬ。
危ない時こそ、前に一歩出てみよう。
「!!??」
俺は夜行さんを抱きしめた。
素手で戦車以上の馬力を誇るとは思えないくらい、その体は細く、華奢だ。
背中に回した手に、肩甲骨の感触が伝わるほどに。
彼女の顔はちょうど俺の胸元あたり。
「……こんなので誤魔化せるとか思ってる訳? はッ、嘗められたものね」
そういいながらも、夜行さんは俺を引きはがすつもりはないようだ。
「チッ。……寒いわ、アンタ、もうちょっと強く抱きしめなさい」
はい。
ふわりと漂うきんもくせいの香り。夜行さんの香りだろう。
「フン、無駄に温かいわね。ほんと、暑苦しい……男臭いし……最低」
すんすんと嗅ぐのはやめて欲しい。
だが、そんな事を言うとまた怒られそうなのでここは黙っておくのが吉だ。
しばらくそのままでいると……
「…………喉、乾いたわ」
彼女の言葉に俺はネクタイを緩めて首元を晒す。
首筋に鋭い痛みが走る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます