クズ勇者は追放されても暇じゃない
シオン
第一章:追放から小悪魔活動開始
第1話:追放されても、暇じゃない
勇者パーティーに入団した初日。
俺――ルカ・フィネス――は、希望に胸を膨らませながらパーティーの面々と顔合わせをしていた。
「さて、これから我らが勇者パーティーの一員として、世界を救うぞ!」
クズ勇者・レオンが胸を張る。見た目は勇ましいが、目の奥に妙な自己顕示欲が透けて見える。
「ルカか。まあ、普通の新人ってところか」
仲間のアリア・フェルンが小声で言う。
「普通…ってなんだよ。普通って」
俺は心の中でツッコむ。
しかし、その期待はほんの一瞬で崩れた。
「……お前、追放!」
レオンが突然叫んだ。理由はよくわからない。どうやらパーティー内での小さな揉め事の巻き添えにされたらしい。
一瞬、世界が止まった気がした。追放――?俺、まだ何もしてないぞ。
だが、落ち込む必要はない。なぜなら、俺には秘密がある。
五感は普通の人間の100倍。物質化、具現化、トリックスター能力――そして知略スキル。
つまり、戦う必要なんてない。パーティーを観察して、嫌がらせして遊べばいいのだ。
追放された翌日。
俺は森の中の小さな隠れ家からパーティーの動向を観察していた。
すると、案の定、レオンが自慢の剣を振り回している。
ここだ――
「ふふ、ちょっとした魔法で、今日の英雄のプライドを粉々にしてやるか」
俺は指先で微細な幻覚を具現化した。剣の柄に小さなトゲが浮かぶ幻影だ。見えないが、触れた瞬間、レオンは思わず飛び退く。
「うわっ、なんだこれ!」
仲間たちも混乱し、森中が笑いの渦に包まれた。
俺は静かに観察しながらニヤリ。追放されても、世界は楽しい――いや、面白すぎる。
「追放されても、暇じゃないな」
こうして、俺の新しい日常――勇者パーティーをこっそりおちょくる毎日――が始まったのだった。
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