第18話
高度五十メートル。
結衣と紫苑の体が、重力に引かれて落下していく。
風が、激しく二人を叩く。
「結衣、目を閉じないで!」
紫苑が叫んだ。
「私を信じて!」
「紫苑……!」
結衣は必死に紫苑にしがみついた。
地面が、どんどん近づいてくる。
このままでは――
死ぬ。
「【魔剣解放(ダークブレイド)】――全力!」
紫苑の体から、凄まじい魔力が溢れ出した。
黒いオーラ。
そして――
そのオーラが、翼の形になった。
黒い翼。
まるで、堕天使のような。
「これは……!」
結衣は驚愕した。
紫苑に、翼が生えた。
「堕天者の真の力……!」
紫苑が叫んだ。
黒い翼が羽ばたいた。
二人の落下速度が、急激に減速した。
そして――
地面の直前で、完全に停止した。
「ふう……」
紫苑は地面にそっと着地した。
結衣を下ろす。
「だ、大丈夫……?」
結衣は震えていた。
「うん……何とか」
紫苑も震えていた。
「初めて、翼を出した……」
紫苑の背中には、黒い翼がまだ生えていた。
だが、徐々に消えていく。
魔力が尽きたのだろう。
「紫苑……!」
結衣は紫苑を抱きしめた。
「ありがとう……助けてくれて……」
「どういたしまして……」
紫苑も結衣を抱きしめた。
「でも、まだ終わりじゃない」
紫苑は上を見上げた。
ホテルの窓から、兵士たちがこちらを見ている。
「追ってくる! 逃げよう!」
二人は走り出した。
ホテルの前には、山本が車で待機していた。
「山本さん!」
結衣が叫んだ。
「早く!」
山本はエンジンをかけた。
二人が車に飛び乗ると、山本はアクセルを踏んだ。
車が急発進した。
「冴子は!?」
山本が聞いた。
「捕まった……!」
紫苑が答えた。
「罠だった! 最初から、全員捕らえるつもりだった!」
「くそっ……!」
山本が舌打ちした。
「冴子の野郎……一人で犠牲になりやがって……!」
車は都心を走り抜けた。
だが――
「後ろから追ってくる!」
結衣が振り返った。
黒いバンが三台、追跡してくる。
「政府の追っ手か!」
山本がハンドルを切った。
車が急カーブを曲がる。
だが、追っ手も曲がってくる。
「しつこい!」
「結衣、魔法で何とかできないか!?」
「やってみる!」
結衣は窓から身を乗り出した。
「危ない!」
紫苑が結衣を掴んだ。
「落ちないように支えてて!」
「わかった!」
結衣は追っ手に向かって魔法を放った。
「【光の矢(ライトアロー)】!」
光の矢が、追っ手のバンに命中した。
だが――
バンは止まらない。
「くそっ、装甲車か!」
「もっと強力な魔法を!」
「わかった!」
結衣は魔力を集中させた。
「光よ、我が敵を貫け――【聖槍(ホーリーランス)】!」
巨大な光の槍が出現した。
そして――
追っ手のバンを貫いた。
ドカン!
バンが爆発した。
「やった!」
だが、まだ二台残っている。
「もう一回!」
結衣は再び魔法を放った。
「【聖槍(ホーリーランス)】!」
もう一台のバンが爆発した。
残りは一台。
「最後の一台!」
だが――
結衣の魔力が底をついた。
『MP:0/330』
「くそっ、魔力が……!」
「任せて!」
紫苑が立ち上がった。
窓から身を乗り出す。
「【魔剣解放(ダークブレイド)】!」
紫苑が剣を振るった。
黒い光の刃が、最後のバンを斬り裂いた。
バンが真っ二つになり、爆発した。
「よし、全部倒した!」
「だが、油断するな! まだ来るかもしれない!」
山本は高速道路に入った。
車はさらにスピードを上げた。
都心から、郊外へ。
そして――
ようやく、追っ手の気配が消えた。
「ふう……何とか、振り切ったか」
山本がため息をついた。
「お疲れ様、二人とも」
「山本さんも……」
結衣は疲労困憊だった。
全身の力が抜けていく。
「でも、冴子さんを助けないと……!」
「無理だ」
山本は首を振った。
「今の我々に、政府から冴子を奪還する力はない」
「でも……!」
「今は、生き延びることを考えろ」
山本は真剣な顔で言った。
「冴子は、お前たちを逃がすために犠牲になった」
「その覚悟を、無駄にするな」
結衣は言葉に詰まった。
「……わかりました」
涙が溢れてきた。
冴子を見捨てることになる。
それが、悔しかった。
「泣くな」
紫苑が結衣を抱きしめた。
「冴子さんは、必ず助ける」
「でも、どうやって……」
「方法は、考える」
紫苑は決意に満ちた目をしていた。
「絶対に、助ける。約束する」
結衣は頷いた。
「……うん」
車は、アジトへと向かった。
アジトに着いた時には、すでに夜になっていた。
三人が車を降りると――
明日香が飛んできた。
「二人とも! 無事だったんだ!」
明日香は涙を流していた。
「心配したんだから!」
「ごめん……」
結衣も涙を流した。
「でも、冴子さんが……」
「聞いた……緊急信号が来た時、もうダメかと思った……」
明日香も泣いていた。
「でも、二人が無事で良かった……」
三人は抱き合った。
泣きながら。
しばらくして、全員が集会室に集まった。
山本が、今日の出来事を説明した。
交渉が罠だったこと。
冴子が捕らえられたこと。
結衣と紫苑が、辛うじて逃げたこと。
全員が、沈痛な面持ちで聞いていた。
「冴子を、見捨てるのか?」
一人のメンバーが聞いた。
「今は、仕方ない」
山本が答えた。
「我々の戦力では、政府から冴子を奪還できない」
「でも……!」
「だが、諦めたわけじゃない」
山本は全員を見回した。
「必ず、冴子を救出する。そのために、力を蓄える」
「どれくらい時間がかかる?」
「わからない。だが、急げば一ヶ月……いや、二週間で何とかなるかもしれない」
山本は地図を広げた。
「その間、アジトを移転する」
「移転?」
「ああ。ここは、もう安全じゃない。政府に場所がバレる可能性がある」
山本は別の場所を指差した。
「ここに移る。もっと山奥だ」
全員が頷いた。
「では、明日から準備を始める。解散!」
全員が散開した。
結衣と紫苑は、部屋に戻った。
部屋に戻ると、二人は疲れ果ててベッドに倒れ込んだ。
「疲れた……」
結衣が呟いた。
「うん……」
紫苑も同意した。
「でも、生きてる」
「うん……」
二人は手を繋いだ。
「ねえ、結衣」
「ん?」
「今日、本当に怖かった」
紫苑が告白した。
「あのまま、落ちて死ぬかと思った」
「私も……」
「でも、結衣がいたから……頑張れた」
紫苑は結衣を見た。
「結衣を守らなきゃって思ったら、力が出た」
「紫苑……」
「だから、ありがとう」
紫苑は微笑んだ。
「結衣がいてくれて」
「こちらこそ」
結衣も微笑んだ。
「紫苑がいなかったら、私、もう諦めてた」
二人は抱き合った。
「これから、どうなるんだろうね」
結衣が聞いた。
「わからない」
紫苑が答えた。
「でも、一緒なら、大丈夫」
「うん」
二人は唇を重ねた。
優しいキス。
だが、徐々に深くなっていく。
「結衣……」
「紫苑……」
今夜も、愛し合いたい。
お互いを確かめ合いたい。
生きている実感を。
二人は服を脱ぎ始めた。
月明かりの中で。
裸で抱き合った。
「結衣、触ってもいい?」
「うん……」
紫苑の手が、結衣の体を撫でる。
胸。
お腹。
太もも。
「んっ……」
結衣の体が震える。
「気持ちいい?」
「うん……すごく……」
紫苑の指が、結衣の最も敏感な場所に触れた。
「あっ……!」
結衣の腰が跳ねた。
「可愛い反応」
紫苑は笑った。
「もっと、感じて」
紫苑の指が、結衣の中に入った。
「あっ、ああっ……紫苑……!」
結衣の声が、部屋に響く。
「好き……愛してる……」
「私も……愛してる……」
紫苑の指が、巧みに動く。
結衣の体が、徐々に高まっていく。
「もう、ダメ……イっちゃう……!」
「いいよ、イって」
「あっ、ああああっ!」
結衣の体が激しく痙攣した。
絶頂に達した。
「はあ、はあ……」
結衣は荒い息をついた。
「すごかった……」
「結衣、可愛かったよ」
紫苑は微笑んだ。
「今度は、私の番」
結衣は紫苑を押し倒した。
「ちゃんと、お返しするから」
「結衣……」
結衣は紫苑の体を愛撫し始めた。
丁寧に。
時間をかけて。
紫苑の反応を確かめながら。
「んっ、あぁ……結衣……上手……」
「紫苑が、教えてくれたから」
結衣の指が、紫苑の中に入った。
「あああっ!」
紫苑の声が響く。
「もっと、感じて」
結衣は動かし続けた。
紫苑の表情を見ながら。
「あっ、もう、無理……!」
「いいよ、イって」
「あっ、ああああっ!」
紫苑の体が激しく震えた。
絶頂に達した。
「はあ、はあ……結衣……最高だった……」
「紫苑も」
二人は抱き合った。
汗ばんだ体を重ね合わせた。
「愛してる、結衣」
「私も、愛してる、紫苑」
二人は深くキスを交わした。
そして――
そのまま眠りに落ちた。
明日からまた、困難が待っている。
でも――
二人は一緒だから。
大丈夫。
翌朝。
アジトは慌ただしかった。
全員が、荷物をまとめている。
今日中に、新しいアジトへ移転する。
「結衣、手伝って!」
明日香が呼んだ。
「この荷物、運ぶの手伝って!」
「わかった!」
結衣は明日香と一緒に、荷物を運んだ。
医療器具。
食料。
武器。
全てを、トラックに積み込んでいく。
「重い……」
「頑張って! もう少しだから!」
二人は汗を流しながら、作業を続けた。
午後三時。
ようやく、全ての荷物を積み終えた。
「ふう……終わった……」
結衣は地面に座り込んだ。
「お疲れ様」
紫苑が水を差し出した。
「ありがとう」
結衣は一気に飲み干した。
「ぷはっ……生き返った……」
「じゃあ、出発するぞ!」
山本が叫んだ。
全員がトラックに乗り込んだ。
そして――
アジトを後にした。
車窓から、見慣れた建物が遠ざかっていく。
ここで過ごした日々。
冴子と訓練した日々。
仲間たちと笑い合った日々。
全てが、思い出になる。
「さよなら……」
結衣は小さく呟いた。
そして――
新しい未来へと、向かった。
新しいアジトは、さらに山奥にあった。
廃村。
かつて人が住んでいた場所。
今は、誰もいない。
「ここが、新しいアジトか……」
結衣は周囲を見回した。
古びた家屋が、点在している。
「環境は悪いが、隠れるには最適だ」
山本が言った。
「ここで、力を蓄える」
全員が、それぞれの家屋に荷物を運び込んだ。
結衣、紫苑、明日香の三人は、一つの家を共有することになった。
「よし、ここが私たちの家だね」
明日香が笑った。
「狭いけど、三人なら何とかなるでしょ」
「うん」
結衣も笑った。
三人は荷物を片付け始めた。
ベッドを並べる。
荷物を整理する。
掃除をする。
夕方には、何とか住める状態になった。
「ふう、疲れた……」
明日香がベッドに倒れ込んだ。
「今日は、もう何もしたくない……」
「お疲れ様」
結衣と紫苑も笑った。
「じゃあ、夕飯作るね」
「え、結衣が?」
「うん。私、料理得意だから」
「やった! じゃあ、お願い!」
結衣は簡単な料理を作った。
カレー。
食材は限られていたが、何とか美味しく作れた。
「いただきます!」
三人で、夕飯を食べた。
「美味しい!」
明日香が感動していた。
「結衣、料理上手だね!」
「ありがとう」
結衣は照れくさそうに笑った。
食事を終えると、三人は外に出た。
星空が、綺麗だった。
都会では見られない、満天の星。
「綺麗だね……」
結衣が呟いた。
「うん……」
紫苑も同意した。
「こんなに星が見えるなんて」
「平和だよね……」
明日香が言った。
「こんな風に、星を見て、ご飯食べて……」
「ずっと、こんな日々が続けばいいのに」
三人は沈黙した。
でも、それは叶わない願いだった。
戦いは、まだ続く。
冴子を救出しなければならない。
政府と戦わなければならない。
「でも」
紫苑が言った。
「いつか、本当に平和な日々が来る」
「そう信じて、戦おう」
「うん」
結衣と明日香が頷いた。
三人は手を繋いだ。
星空の下で。
未来を誓い合った。
必ず、平和を勝ち取る。
必ず、冴子を救う。
必ず、自由を手に入れる。
そのために――
戦い続ける。
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