第4話 映像

 神田署の映像分析班では、数台のパソコンを使って帝都銀行の防犯カメラの映像を分析していた。そこに連絡を受けて岩田と宮崎がやってきた。

「不審な点が見つかったって?」

 息を切らせながら宮崎が分析班の班長の男に聞いた。

「不審というか……これをご覧ください。この映像は帝都銀行本店ビル内のいくつかの防犯カメラの映像です」

 パソコンのディスプレイにたくさんの防犯カメラの映像が映し出されていた。そのうちの一つを指差しながら班長は答えた。会議室の中でスマホの画面を見ている御手洗吟の姿が映し出されていた。映像を見ていた岩田刑事が気づく。

「おや、メールだな? ガイシャのスマホにメールは届いていたんだったか?」

 宮崎刑事も映像を見たままで答えた。

「当日のメールは家族とやりとりしているだけでした。しかしこれは今届いたばかりって感じですね」

 映像が切り替わりエレベーターの中の映像が映し出された。エレベーターが屋上で停止し、御手洗吟が降りてゆく。

「エレベーターの映像です。当日の夜、ガイシャが乗っているのが最後で、これ以降発見されるまでだれもエレベーターには乗っていないことは確認済みです」

と分析班の若手のスタッフが説明した。うなずきながら岩田刑事が言った。

「それは不思議ではないだろう。ガイシャが一人でエレベーターに乗って屋上に行き、飛び降りた……」

「屋上にはカメラは設置してありません。エレベーターの隣の非常階段にもカメラは設置してありません。したがって屋上から地上まで非常階段を使えばカメラには映りません」

 班長の説明には宮崎刑事が答える。

「そうだろうな、それは捜査会議でも確認したんじゃなかったか?」

 分析班が指摘する不審な点がわからず岩田刑事は苛立ってきていた。

「ところが非常階段から廊下に出るところですべての階でカメラに映っています。たとえば、これが二階です。一階だけ入り口のホールにつながっているため、別の角度になります」

 岩田刑事の苛立ちをからかうように分析班長の説明はかえって馬鹿丁寧になってきた。宮崎刑事が怒りを抑えながら聞いた。

「どこが変なんだ? だれも映っていないじゃないか?」

 若いスタッフが班長の顔をうかがいながら答えた。

「それが変なんです。これが二階の映像です。ガイシャが投身自殺したと思われる時間帯からしばらく経過した九時過ぎです」

 廊下を写した映像が流れる。誰も映っていない。

「だから」

 キレそうになった岩田刑事がそう言った瞬間、一瞬映像が真っ暗になり、すぐに元に戻った。

「なんだ今のは?」

「瞬停、瞬間的な停電です。当日は、都内は雷が発生していて、雨こそ降りませんでしたが、一瞬停電したんです。カメラはUPS(無停電電源装置)からとった別電源なので影響しなかったんですが、照明は一瞬切れました。ところが一階のホールの映像には瞬停が発生していないんです。帝都銀行に電話で問い合わせたところ、一階だけ特別な対策をしているということはないとのことでした」

 説明を理解できない岩田刑事は戸惑いながら聞く。

「え~と、つまりどういうことだ?」

「この映像は当日のものじゃないんじゃないかってことです。ここにライオンの像がありますよね? 金色にピカピカ光っている。この像ですが、外で雷が光っていてもそれらしい光が反射していないんです。それも気になります」

 若いスタッフが帝都銀行本店のロビーに置かれたライオンの像を指差しながら説明した。

「だれかが映像をすり替えた? ホシは階段を使って逃げ、一階のホールを抜けたが、その映像がすり替えられたため、映っていない……」

 そう言う宮崎刑事と顔を合わせた岩田刑事が慌てて言った。

「課長にすぐに知らせろ」

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