第2話 大失恋?
顔面にかかった冷たい刺激で目を覚ます。
「きゃー!!ごめんなさいっ!み、水こぼしちゃった、!!!は、拭かないと、、。あれ、目覚めた、!?」
微睡んだ視界の中。あの時の天使が俺を見つめ慌てている。
あぁ、ここが天国か。
「み、!皆んなっ!!!起きた!!彼が起きたわ!!」
慌ただしい音と共に俺から離れていく。
しばらくして仲間であろう天使が3人加わり俺の顔を覗き込んだ。
気の強そうな天使が言う
「おい、ヤブ医者。こいつもう意識あるよな?」
ヤブ医者天使が続ける。
「ヤブ医者って、、えぇ。もう大丈夫でしょう。」
大丈夫、?何の事だ、、??
「ここは…天、国なんだろ、、?」
自分でも驚くほどか細い声で確認すると空気が大きく揺れた。
「ぶふーーーっ!!!ギャハハ!天国!?何言ってんだ!?ヒーっ!!」
3人目の天使が汚い声をあげる。それを嗜める花のような声が響が響く。
「こら!クロウ。やめて。申し訳ありません、!私の不注意で貴方が私の下敷きになってしまったのです。目が覚めたようで本当に良かった…!」天使が俺を見つめている。
「…俺は、生きているのか…?じゃあここは一体…あなた方は…」身体を起こし辺りを見渡すと薄暗く湿った洞窟のようなところだった。
全然天国じゃない…。
「ええ。生きてます。あ、まだ安静に…!ここは…私達の一時的な、住まいです」
「取り敢えず!ここなら安全なので…!ゆっくり療養してください。私はメルニカ•カーガインです。メルニカでもメルでも何でも読んでください」
「僕は医者のリューイ•ホワイト。決してヤブ医者なんかではないので安心して下さい」
リューイの優しい声が響く。
「あたしはメルの幼馴染のリニーだ。よろしくな」
「そんで大笑いしてるコイツは魔法使いのクロウ•ティロ。あぁ見えて腕は良いんだ」
リニーは後ろで笑い転けているクロウを親指でさし代わりに挨拶をした。
「貴方のお名前お聞きしても良いでしょうか…?」
メルニカが俺を、見つめる。
「…俺はルーベル。助けてくれてありがとうございます」
「助けただなんて…!元々は私の不幸で…!本当にごめんなさい。そういえばどうしてこんな所を歩いてらしたのですか?ここは魔物も沢山居ますし…」
どうしてこんなとこに居るか…
それは、
「隣国で出た魔王を討ちに勇者ギルドから派遣されたんです」
本当は破茶滅茶に弱いから偵察のため捨て駒として派遣されただなんて死んでも言えないな…
そんな事を考えているとリューイが驚いたように目を見開いた。
「ルーベルさんも魔王の元へ行くのですね。」
続いてリニーが口を開く
「あの荒くれ者で有名な魔王に生身の人間1人で立ち向かうって…!?自ら命手放してるようなもんだぞ!?捨て駒か!?」
リニーの言葉にギクリと心臓が言う。
言葉に詰まりかけた時メルが嬉しそうに声を上げる。
「良ければ一緒に行きませんか!?魔王の元へ!実は武道派な人連れてくるの忘れてしまって…魔物から逃げる日々だったんです。」
彼女の懇願するような眼差しに即答する。
「良いのですか!?わぁ!皆さん聞きました!?勇者の仲間ですっ!!」
メルニカの歓声につられて頬が緩んだ。
「ところで、皆はどうして魔王の元へ??」
ふと呟くと皆の動きが一斉に止まり静かになる。
ずっと笑い転けていたクロウまでもだ。
神妙な面持ちで空気を切ったのはリニーだった。
「実はな…攫われたんだよ…メルの大切なっ、むぐっ!!」
最後の言葉を聞く前にメルが頬を染め慌てた様子でリニーの口を塞いだ。
「リ、リニー!!!そこまでっ!!」
「ルーベルさん!気にしないで!!」
気にしないでと言われても…え、今大切なって、
俺失恋した…?俺の物語始まって早々に…?
リニーの言葉を反芻しながら理解を試みる。
これは、神の試練か天使のいたずらか。
どのみち出た答えは『失恋』であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます