断頭台送りにされる悪役領主「S級鑑定スキル」で破滅フラグを回避します! ~各地で追放された有能な人材を集め最強の領地作り~
羽田遼亮
第1話 断頭台
燃えるように赤い夕日が、王国第五王子ライド・フォン・アルカードの視界を焼いていた。
広場に設営された断頭台。かつて彼が「無能」と蔑んだ平民たちの怒号が、鼓膜を突き破らんばかりに響いている。
「悪徳領主ライドに死を!」
「我々の税を奪い、私腹を肥やした大罪人に裁きを!」
――違う。俺が徴収した金は、すべてこの後に来る大飢饉の備えだったんだ。
――あの土地を買ったのは、魔王軍の侵攻ルートを塞ぐためだったんだ。
言い訳など、誰にも届かない。隣には、かつての親友である第一王子が、勝ち誇った顔で「聖女」の手を引いて立っている。
重たい鉄の塊が落ちてくる。
どつっ、と鈍い音がして、景色がぐるりと回転した。
視界の端で、彼が最後まで離さなかった「領地運営の記録帳」が、自分の血でじわじわと赤く染まっていくのが見えた。
そこで、俺の意識は途絶えた。
「うぁあああああああああああああああ!」
俺は絶叫して跳ね起きた。
「く、首! 首がつながってる! じゃなくて、ある! 俺の首がある!」
慌てて自分の体を触りまくる。
ボロボロの囚人服ではない。最高級のシルクの寝間着だ。
鏡に映った自分は、二十歳の処刑時ではなく、まだ「悪徳領主」として名を馳せる直前、十八歳の姿だった。
「……夢か? いや、あんなに生々しい感覚が夢なはずがない」
冷や汗を拭い、ふと枕元を見て、彼は凍りついた。
そこには、夢の最後で見たのと全く同じ、「血染めの汚れがついた記録帳」が置かれていたのだ。
震える手でそれを開く。
そこには、まだ自分が経験していないはずの「未来の破滅」が、自らの鑑定スキルによって詳細に書き込まれていた。
そうか、二週目の人生は「鑑定スキル」が付与されるのか。
どうせならもっと格好いいスキルが欲しかったが贅沢は言えない。さっそく、スキルを発動してみる。
【鑑定結果:ライド・フォン・アルカード(2年後)】 状態: 処刑済(罪状:国逆罪) 領地の末路: 飢餓により崩壊、その後魔王軍により滅亡。 真実: 彼の善行はすべて「悪行」として解釈され、信頼した部下にも背信される。
「……笑えない。笑えいよ、こんな冗談!」
俺はベッドから飛び出した。
もし、この記録帳が「確定した未来」なのだとしたら、大人しくこの王宮にいては、またあの断頭台に送り込まれるだけだ。
「こうなったら……断罪される前に、こっちから捨ててやる! 王都なんて知るか! 俺は俺の鑑定スキルで、未来の『最強の人材』を先に囲い込み、誰にも文句を言わせない最強の領地を作って生き延びてやる!」
数日後。俺は王宮の謁見の間にいた。
王子が「貴様を追放する」と宣告するより早く、俺は膝をついた。
「王子! 私は自分の無能さを痛感いたしました! つきましては、北の最果てにある『クラムヘイム荒野』を領地として賜り、そこで隠居したく存じます!」
「……は?」 呆気にとられる王子を無視し、俺は密かに【鑑定眼】を発動させた。
周囲の貴族たちの頭上に、不都合な真実が浮かび上がる。
【鑑定対象:第一王子側近】 裏の顔: 隣国のスパイ。半年後に王子を暗殺予定。
【鑑定対象:隣に立つ聖女】 秘密: 実はただの詐欺師。聖なる力は「魔道具」による偽造。
(……地獄だな、この国。やっぱり早く出ていくのが正解だ)
俺は心の中でほくそ笑んだ。
彼の手には、あの「血染めの記録帳」がある。そこには、これから世に出てくるはずの「今はまだ虐げられている天才たち」の名前が、未来のデータとして記されているのだ。
「いいだろう、ライド。望み通りあの死地に追放してやる!」
王子の嘲笑を背に、俺は足早に王宮を後にした。
まずは一人目。
未来の記録によれば、今まさに王都の地下牢で「無能」の烙印を押され、処刑を待っている少女――後に『殲滅の魔女』と呼ばれることになるエルナを救い出すために。
「待ってろよ、エルナ。君を『ゴミ』扱いする世界なんて、俺が鑑定スキルでひっくり返してやるからな」
逆行した悪徳領主による、やり直し(リベンジ)の領地経営が幕を開けた。
――――――
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