青春って綺麗じゃなきゃダメですか?〜未完成の詩〜
物書狸。
序幕
プロローグ いつ日の朝のHR。
キーン……コーン……カーン……コーン。
朝のチャイムが鳴り終わるころ、教室にはすでにざわざわとした声が満ちていた。
文化祭前で浮き足立つ空気。カメラを構える生徒、談笑する生徒、ぼんやり窓の外を見る生徒。
“いつもの朝”なのに、どこか楽しげな熱がある。
ガラッ。
「ハァ……ハァ……! ま、間に合った……っ!
せ、先生として遅れるわけには……いかないものね……。
えっ!? なにこれカメラっ!? 今まだ息整ってないのに撮るの!?」
勢いよく入ってきた担任が、教室中に向けて必死に姿勢を正す。
その様子に、生徒たちはクスクスと笑った。
「文化祭の展示用って言ったじゃーん! 今日から教室撮るやつ!」
「ま、先生だから。いつも通りでしょ? あはは」
朝の光が差し込む中、笑いが自然に広がる。
このクラスは、どうやら“こういうノリ”らしい。
「先生、顔赤いよ? 高血圧? トマトジュースなら血圧下がるよー。
俺特製ジュース、明日持ってきてあげるから成績よくして?」
ガンッ。
椅子を蹴る音が響く。
「うるせーよ。くだらんこといちいち挟むな。
お前はジュース作る前に女心学べよ、ばーか」
「なに? 今日そういうデリケートな日?
鉄分と葉酸のサプリいる?」
ガンッ。
「ちょっとちょっと! 喧嘩ダメだよ!?
……ていうかお腹空いたから早くHR終わらせてお弁当食べよ?」
「ぷっ……まだ来たばっかだし。
でもほんと、どんな胃袋してんのさ。
……まぁ一理あるけどね。
はいはい先生ー、出席とってー」
「あっ、うん……えっ……あれ……?
えーーー!! クラス名簿、職員室……ッ!
ちょっ、ごめーん取ってくる!!」
担任が全力で走り去っていく。
残された教室には、温かい笑いの波がぽわっと広がった。
――ここは、少しうるさくて、少し優しくて。
誰もが“ここでの朝”を気に入っている、そんなクラスだ。
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