第2話
白い階段を上がって、右手にある部屋が母のいる202号室だ。
そっと、ドアを開けると、中から笑い声が聞こえる。
寝たきりの母の真横で、笑って立っている背の高い女の子がいた。
ベッドに近づいて母の顔を覗くと、こちらもガリガリに痩せ細っているが、弱弱しく笑っていた。背の高い子は可愛らしい顔に、笑うとえくぼがみえる。ちょうど、背はぼくよりも頭一つ低い感じだった。
何よりも病室のベッドに注ぐような涼しい風に、背の高い子は長い髪がなびくようは、とても綺麗で儚かった。
白衣を着た医者が来た。
母の容態を鑑み。
ぼくにちょっと、とドアの方を向いた。
ぼくは付いていくと、廊下で医者は、母は明日にも危ないかも知れないので、その間。同室の患者さんとできるだけ仲良くしてやってほしいと言った。同室の子。背の高い子は、彼女は話せないのだが、彼女も明日辺りから危ないといっている。
ぼくには信じられなかったが、医者が嘘を言っても仕方がない。その証拠に医者の次のセリフを聞いて、ぼくの中で愕然とし、納得をした。
「彼女にはお見舞いに来てくれる人が、未だかつて一人も来たことがないんだ」
それから、ぼくも二人だけの病室内で、しばらく背の高い子と笑いの渦に巻き込まれてしまう。
母が気丈にも、「いつ死ぬかもしれない。ベッドから落ちるかも知れないし、階段から落ちるかも知れない。地獄にだって……ねえ。だから、笑い転げながら転げ落ちたいの」と、冗談にも真面目に言うので、こっちは心配しながら母の生真面目な顔との滑稽さに思わず笑ってしまう。
背の高い子は、元気に笑っていなかった。
どこか、気の抜けた笑い声のようにも感じる。
多分、ここから見てもだいぶ衰弱している身体をしているので、頬にではなく喉に力が入らないのだろう。
彼女は痩せ細っていた。
ぼくにできることは、この人と最後まで一緒にいるくらいだ。
医者は、こうも言った。
彼女には、孤独がある。いつも一人で座っていながら微笑んでいるんだ……。
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