君限定に起きるバグ
冬彩 桜月
1章 過去に生まれたバグ
E p i s o d e .1
ーーーあの日から、俺にバグが生まれたーーーー
昼の光が差し込む 校舎の廊下では 生徒たちの楽しそうな声が聞こえてくる。
「朝宮先輩って、ほんとかっこいいよね。」
成績優秀・スポーツ万能・歌や美術の才能にも恵まれ優しい。
誰からも愛され信頼される 正に理想の生徒会長。
「マジ最悪、重たいし」
荷物を運べと先生に頼まれて困っている女子生徒
みなが素通りしていく中
俺だけが話しかけに行く
「俺が運ぶよ。ちょうどそこに行く用事あったし」
優しい声と不自然に見えないような微笑み。
すると女子生徒は顔を赤らめながら
小さく「ありがとう」と呟き 逃げるように走って立ち去る。
ナルシストと言われるかもしれないが俺は誰にでも優しい自分が好きだ。
みんなに愛される人格を演じている時は 自分のことが他人事に思えて気が楽。
誰も泣かない、誰も傷つかない それでいい。
「見て、秋月先輩だっ!顔小さい 綺麗……」
女子生徒の騒ぎ声で後ろを振り向く。
(ゆきとは 身長180cm 美希は192cm)
大きめのカーディガンを着ており 周りを明るくする性格の持ち主。
モデルのような見た目とその性格から
女子生徒の彼氏にしたい生徒ランキング 上位に必ず入っている。
しかし、1位になることはない。
「……秋月先輩ってさ、顔はいいけど右頬の傷で勿体ないよね」
ズキッというものに似た感覚が胸を突き刺さすように痛みとして襲う。
すると 急に 糸を切られた※マリオネットのような 感じで体に力が入らなくなり
倒れそうになった俺の体を誰かが支えた。
「会長さん、こんなとこにいたの?勉強教えてくれるって約束してたじゃん」
優しく明るい声のほうを見た。
…………美希だ。
手を引かれ空き教室へと連れて行かれる。
床に座った美希は自分の膝の上に 俺を座らせて
背中を優しくさすった。
美希の胸に耳を当てる
……トク、トク、トク という 心地いい鼓動でようやく自分はちゃんと息を吸え始めた。
「ボクの話してる子達いたね〜。それで思い出しちゃったの?」
美希の問いに俺は頷き 顔を上げた。右頬の傷は
俺のせいでできたものなのだ。
「この傷は事故みたいなもんでしょ?」
美希からしたら事故だったと思える過去のこと。
でも、これは 過去の俺の罪なのだ。
※マリオネット=糸を使い上から操る人形のこと。
操り人形とも言う。
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