第2話 それでも俺は愛奈を見棄てられない


その日から毎日のように邦明が俺に絡んできた。


「なぁ俺に愛奈を取られてどんな思いだ? 聞かせてくれよ」


そう俺に言ってくる。


構わないで欲しい。


長年幼馴染をしていたし、恋人どうしだったんだ。


俺が辛くないわけないだろう。


「別に良いよ! 愛奈を幸せにしてくれるならそれで……それじゃぁな」


そう言うと厭らしい笑顔で邦明は愛奈を連れて去っていく。


この性格……今回もまた駄目なのか……ハァ~。


思わず溜息をつきたくなる。


「やっぱり、私、邦明にして良かったわ。イケメンだし優しいしもう最高、親友に恋人を奪われたってどんな気持ち? 私を大切にしてくれない純也が悪いのよ」


相変わらずの定番のマウント。


いつもの事だ。


だが、俺は此奴の良い所も知っている。


こんな破綻した性格、普通なら嫌いになるだろう。


だが、惚れた弱みから俺は嫌いになれない。


周りの友達は『いつも』


「もう愛奈なんて忘れろよ」


「あんな女、純也に似合わない」


「他にいい女沢山いるよ」


そう言ってくれて愚痴につき合ってくれているが、そう簡単に気持ちは切り替えられない。


地味に辛いのが愛奈の母親に謝られることだ。


「おばさんね、純也くんがうちの子にはお似合いだと思っているの。本当よ!……なんだかいつも、ごめんね……だけど、見捨てないで欲しいの……流石に、もう無理は言えないけど、傍にいて純也君が居てくれたら嬉しいの」


ハァ~また頼まれてしまった。


愛奈は本当に男運が悪い。


何故かいつも悪い男に引っ掛かる。


だから、おばさんもおじさんも凄く心配して俺に頼ってくる。


おじさんと魚釣りに行った事もある。


おばさんには良く飯を食わせて貰った。


だからこそ、俺は愛奈を見棄てられない。


だが、そんな周りをよそに二人の俺へのマウントは続いていく。


それでも俺は愛奈を見棄てられない。


『好きになる』って想定外で本当に怖い。



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