神に選ばれた器は人間をやめたくない
@KSGood
第1話
テレビから、ありえないはずのニュースが流れていた。それなのに、私は笑えなかった。
画面の向こうで起きている異常は、ちょうど今、私の身に起きていることと、驚くほどよく似ていたからだ。
【速報】
『髪が突然燃える、水になるといった異常現象が、ここ最近で七件も確認されています』
『異常現象? 人間は愚かだなぁ……なぁ? そう思わないか?』
不気味に微笑むこの男は、自らを星の化身と名乗り、私に「器になれ」と言い出す、どう考えてもやばい人だった。
『やはり、他の化身たちも〈
こいつに〈けんしん〉とかいうものをされたせいで、私の髪は夜空みたいな群青色に、そこへ星のような金色が瞬いている。目だって、どう見ても星空だ。
「そのけんしん?のせいで学校に行けなくなるじゃん。どうしてくれんの?」
『どうやら他の化身達の器は全員病院に行ったようだね。おかしい。』
クックッと喉を鳴らして笑う男を横目に
「私も行く。仲間がいるなら安心できるし。」
と言った。その言葉に額に右手を当て男は大きく口を開けて笑った。
『はははっ!仲間!?笑える…器達とは仲良く出来るかもしれんが化身と会話を試みるのはやめといた方がいい。』
「なんで?」
『やばいやつしかいないからさ』
それ、あんたが言うのか。そう思ったけど口には出さず、私は無視して病院へ向かった。
病院で私の顔……というより、髪と目を見た看護師さんは、すぐに有名な大学病院を紹介してくれた。異常現象が起きている人たちが、すでに集められているらしい。
大学病院に着くと、またすぐに別の看護師さんに声をかけられ、私は「異常現象が起きた人たちのいる場所」へ案内された。
『この人間は馬鹿なのか?人間ごときが、神の力について分かるわけがないだろ』
後ろでは、腕を組んだまま指をトントンと鳴らし、苛立ちを隠そうともしない。
看護師さんが扉を開けると、そこには七人の――明らかに"異常現象が起きた人たち"がいた。
「わっ……よかったー! 同じくらいの歳の子、いたんだ!」
流れる水みたいな髪の女の子が、私を見つけるなり小走りで駆け寄ってくる。
「私、高校三年生! よろしく〜!」
両手を広げて、やけに明るく挨拶された。それだけで、胸の奥が少し軽くなる。
「私は……高校一年生。先輩ですね」
「ええっ!? タメ口でいいよっ!」
「じゃ、じゃあ……」
「私は
にこやかにピースまでしてみせる。異常現象が起きたっていうのに、こんなに明るくいられるのは、正直ちょっと羨ましかった。
「私は……
「失礼。会話に割り込む形になってしまいましたが、自己紹介をさせてください」
そう言って、スーツ姿のおじさんが名刺を差し出してきた。
「会社員の、
高校生の私に対して丁寧すぎるほどの挨拶に、思わず背筋が伸びた。
「さ、榊瑠璃です……」
燃えるような炎の髪。それなのに、言葉遣いも態度もやけに丁寧で、正直、見た目とまったく噛み合っていない。
「自己紹介は、あとにしませんか?八人で話した方がいいと思うんです。……いえ、八人というより……十六人、でしょうか?人間なのかどうかは、分かりませんけど……」
大人しそうなお姉さんが、少し困った顔でそう言った。
『ハッ! 人間ごときに、決める権利はねぇよ。他の化身と話す義理も、俺にはないね!』
その声と同時に、さっきの会社員――田村さんの背後から、上裸で逞しい男が姿を現した。
燃えるような赤い髪と、同じ色の瞳。見間違えようもない。炎の化身だ。
すると今度は、大人しそうなお姉さんの後ろから、神父服のような衣をまとった、長い銀髪の男性が静かに現れる。その姿を見た瞬間、隣にいた星の化身が息を呑んだ。
『……御月様……!』
興奮を隠しきれない小声だった。
『そうだな。それに、太陽と同じ空間にいるだけで、虫酸が走る』
銀髪の男――月の化身は、見下すように、そこにいた太った男の人へと視線を落とす。
その背後から、顰めっ面をした、マグマのような髪の男性が前に出た。
『奇遇だな。俺も、息が詰まってたところだ。空気が荒んでてな』
そう言った瞬間、月の化身と思しき男と、真正面から睨み合う。
「まぁまぁ!みなさん、そんな怖い顔せんでとりあえず落ち着きまひょ〜?」
糸目の男が、両手をひらひらと振りながら、どこか胡散臭い関西弁みたいなイントネーションで喋る。
「せっかくこの人に集められたんやから、とりあえず話、聞いたってや〜!」
そう言って、男が指を差した先には、白衣を着た四十代くらいのおじさんが立っていた。
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