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――貴方が余裕があると思っている人は、貴方を見下しているから。
そんなコメントを見て、ただ淡々と思うのだ。何を今更。と。
信頼の置く相手には、好みそうな会話を延々と続け、自分の意思はすべて空気に溶かす。どうせ自分に興味のある事しか食いつかないと思っているから。
電車で隣に子供が座って暴れて居たとしても、『なんで知らない人のとなりに座らければならないの?』と言われても、『ま、子供がする事だしね』という言葉で片付けてしまう。
根本的に私は本気で人と向かい合って居ないし、何処かで見下しているのだ。だって話の合わない、真剣に聞きもしない人間の相手をするだけ時間の無駄だから。
本来争いと言うのは、同じレベルのものでしか発生しないとはよく言われているが、まぁそんなにものである。私と『争う』に相応しい相手ではない。だから適当にあしらって生きているに過ぎない。
「あのさぁ、昨日お友達と遊んだって言ったじゃない? 大抵はその子が一方的に話して、あの子の好きな行きたい場所に行って、食べ残しをさり気なく私に渡して、邪魔な荷物を私に預けてただひたすらに遊んでいた」
リビングで寛いでいた鏡花は何を思ったのか淡々とそう言った。傍から見たらそれなりに相手を利用しているとしか思えない言い方だが、鏡花の雰囲気は悲しみも怒りもない。ただ淡々と見てきたものをそのまま垂れ流しているだけの何かがあった。
「苦しさや不満は?」
「あぁ、ないよ? 歩き疲れた事と、雨が降った事が不満なだけ。あの子が私をぞんざいに扱うのは、あの子元来の気質に起因してるからね。見たままの事、言われた事をそのまま受け取るの。言葉の意味の裏側、私の精神状態まで考えないってだけ」
話を聞くが限り、鏡花自身が本気で嫌がっている訳ではなさそうである。だからこそ『辞めて欲しい』と態々口に出す事もしなかったのだろう。そして友人は『そう扱っても構わない』と何処かで思っているのだ。
「帰って来る時の方が不満だったかも。隣に座っていた男児が暴れ回ってて、私の体に腕とか足とか当たるんだよね。あぁあと、前に座っていたその子の姉と思しき子が親に向かって『なんで端に座らないの!! 渡し知らない人のとなり嫌!!』って言ってたな。まぁ子供がしたものだよ」
其から此方を向く。俺の顔を見る。ただ黙って。
「皆自分の事が第一優先で、それ以外の事は何も考えてない。大人になって、ある程度気を使える様になっても、裏の裏まで勘ぐれない。其れが出来るのは限られた生き物だけだから」
そういうと、僅かに口角を上げた。まるで何かを見下す様に。『そうやって愚かであれよ』とでも言うように。
「私は自分と同じ視点て話せない人と、本気で相手をしたくない。時間の無駄。だから『あぁこういう人なのね。大人しくしているか』でお終い」
「お前に軽んじられる真似はしてないはずだがな」
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