第16話 潜む影の王
忘れられた遺跡を抜けた先、通路はさらに暗く、湿気と冷気が肌を刺す。石の壁に映る影は不規則に揺れ、微かな光が床を照らすだけの深層に入った。
「……ここまで来ると、何かが待っていそうだな。」
キースは剣を握り直す。ミィ、黒猫、シャオも身を低く構え、耳をピクピク動かして周囲を探る。
通路の奥で、微かに不気味な気配を感じる。影がうごめき、普通のモンスターとは異なる存在感を放っている。
「……来たな、影の王か。」
キースは小さく呟く。これまで現れた影霊や群れとは違う、圧倒的なオーラが漂っている。
暗闇から、巨大な影の王が姿を現した。全身は漆黒で、人型だが四肢は長く、無数の影が周囲を漂っている。瞳は赤く光り、見る者の意志を揺さぶる力を持つ。
「……くそ、最弱の俺に挑んでくるのか!」
キースは剣を握り直し、三匹の猫たちに目配せする。
【まねきねこ、発動】
【対象:ミィ、黒猫、シャオ】
猫たちは前に出て、影の王の注意を引きつける。ミィが左、黒猫が右、シャオが後方から動きを封じる。小さな体で巨大な敵を翻弄する――その連携が、最弱と呼ばれたキースを守る唯一の盾だ。
影の王は腕を振り下ろし、無数の影を放って攻撃する。触れるものを吸い込むような力を持ち、通常の攻撃では歯が立たない。
「……くそ、弱点を見つけなきゃ!」
キースは魔法石の力を集中させ、剣を振る。影の王の体に微かな光の裂け目ができた瞬間、猫たちはその隙を利用して翻弄を続ける。
ミィが左から攻撃を誘導し、黒猫が右から牽制。シャオは後方から影の王の体勢を乱す。影の王は巨大だが、猫たちの連携によって動きを封じられ、次第に力を削られていく。
「……よし、今だ!」
キースは剣を振り下ろし、魔法石の力を剣先に集中させる。影の王の中心に深く切り込み、赤い瞳が揺らぐ。
影の王はうなり声をあげ、黒い影が周囲に弾ける。しかし、猫たちは身を寄せ合いながら連携を維持し、キースの攻撃をサポートする。
最後の一撃で、影の王は力を失い、闇の中へと消えていった。広間には、キースと三匹の猫型モンスターだけが残る。
「……ふう、危なかったな。」
キースは息を整え、猫たちの頭を撫でる。ミィ、黒猫、シャオは小さく鳴き、互いに体を擦り合わせて安心している。
深層の最奥で、影の王の存在を消し去ったことで、キースは自分の成長を実感した。最弱だった自分も、仲間との絆と努力でここまで来られる――それを確信した瞬間だ。
「……行こう、ミィ、黒猫、シャオ。」
三匹は小さく鳴き、キースの周りに集まる。
潜む影の王――それを倒したことで、最底辺探索者と猫たちの絆は、さらに強固になった。深層の闇はまだ続くが、彼らは恐れず、一歩ずつ確実に進むのだった。
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