第13話 隠された部屋
消えた道標を越え、さらに深層の通路を進むキースと三匹の猫型モンスター。石造りの床は湿って滑りやすく、壁には古代文字や魔法陣が刻まれている。微かな光だけが足元を照らす中、猫たちは前方を警戒して進む。
「……あたりが静かすぎるな。」
キースは剣を握り直し、耳を澄ます。ミィ、黒猫、シャオも身を低く構え、微かな音にも反応して耳をピクピク動かす。
通路の奥で、壁にわずかな隙間があることに気付いた。普通なら通れない幅だが、微かに空気の流れを感じる。
「……これは、もしかして……」
キースは慎重に壁に近づき、隙間を覗き込む。すると、中には小さな部屋が隠されていた。扉もなく、普通の探索者には見つけられない秘密の空間だ。
「……隠し部屋か。」
猫たちは一斉にその部屋を確認し、慎重に前に出る。ミィが先頭で空間の安全を確認し、黒猫とシャオも周囲の魔法陣や罠を探知する。
部屋の中には、古びた箱や書物、そして微かに光る宝石のような物が散らばっていた。
「……なんだこれは。」
キースは箱を開けてみると、中には古代の文書や小さな魔法石が入っている。魔法石は淡く暖かく光り、触れると手のひらに微かな振動を感じた。
「……スキルに関係するものかもしれないな。」
キースは慎重に魔法石をポケットに入れ、猫たちに目配せする。三匹は小さく鳴き、探索の完了を知らせる。
しかし、部屋の奥から不意に物音がした。小さな箱が勝手に動き、床の影が揺れる。
「……何だ?」
キースは剣を構え、猫たちも警戒態勢を取る。すると、箱の影から小型のモンスター――古代の護衛型スライムが現れた。
「……なるほど、守りか。」
キースは瞬時に判断し、猫たちに指示を送る。
【まねきねこ、発動】
【対象:ミィ、黒猫、シャオ】
三匹はスライムの注意を引きつけ、キースが攻撃できる隙を作る。ミィは左から揺さぶり、黒猫は右から誘導、シャオは後方で防御のタイミングを指示する。
戦いは短時間で終わった。護衛スライムは猫たちの連携によって翻弄され、キースの剣によって倒される。部屋の中は再び静寂を取り戻した。
「……ふう、危なかったな。」
キースは剣を下ろし、猫たちの頭を撫でる。三匹は小さく鳴き、互いに体を擦り合わせて安心している。
隠された部屋には、深層攻略に役立つ文書や魔法石が残されていた。
「……よし、これで少しは有利に進めそうだな。」
キースは小さく笑みを浮かべ、宝物をまとめて背負う。
通路の外に戻ると、再び深層の暗闇が広がっている。
「……行くぞ、ミィ、黒猫、シャオ。」
三匹は小さく鳴き、キースに寄り添う。
隠された部屋で得た力と知識――それは、最底辺探索者と猫たちが、深層の未知なる試練を乗り越えるための、小さな武器となったのだった。
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