女子校の王子様が陰キャな私を好きかもなんてありえない……よね?

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第1話 女子校の王子様

彼女が教室に入ってくるなり、空気が変わった。

ざわめきが一段階明るくなって、誰かが名前を呼んで、誰かが席を詰める。黄色い声があがる。


ー王子様。


そんなあだ名で呼ばれているのを、本人は笑いなが否定するが、その笑顔がそう思わせてしまう。


彼女は一ノ瀬瑠衣(いちのせるい)という名前で、かっこいい容姿と優しさで入学当初から学校中の人気を集めた。それからというもの、彼女は王子様としてこの学校に君臨しているのだ。


そんな彼女とは対照的な私、雨宮雫(あまみやしずく)は、教室の隅。窓際の一番後ろでひっそりと、目立たないようにすごすのが得意だった。いわゆる、陰キャという部類である。


だから最初は気のせいだと思った。


「……また、見てる?」


気がついたのはこれで四回目。大勢の人に囲まれ、誰かと話している最中なのに、一瞬だけこちらを見た、ような気がした。女子校の王子様の一ノ瀬さんが。


「これって私の、気のせいだよね……?」

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