M-Deep-1

脳幹 まこと

漫才本編


「はいどうもー、るるるいえ=らららですー」

「今日はよろしくお願いしますー」

「是非とも笑っていってくださいねえ、約束ですよー」

「真顔で圧をかけないでくださいね」

「僕ら、コンビ結成してもう9年ですからね、そろそろりにいきたいですよね」

「そうですね」

「アタマを」

「頂点ね。ちょっと物騒ですね」

「いや、緊張してるからかな、まあ、今回はコントをやっていきたいんですけども」

「コントやります、ってわざわざ言う人いないんじゃないですかね。学校の先生やりたいでいいんですよ」

「はい、では田中! この問題を解いてみろ」

「ちょっと飛んでますね、ごめんなさいね。ちょっとぬばかり良くないですね、3+2=5ですね」

「正解だ! では鈴木、次の問題を」

「あんまりコントで1:多やらせる人いないですけどね、まあよいでしょう。おそらつえーと、12ですか」

「正解だ! では吉田、次の問題を」

「うん、ボケてほしいかな。ぼけぼけのぼけ、おとぼけ。そういうのは舞台裏でやればよろし、ってなもので」

「なあ、教えてほしいんだ」

「なんでしょうか」

「最近な、俺のひじとわきの間にな、妙なぬめりけが出来ているんだ。手で触るとぬるっとして、なんだか生臭い。なんだろうな、魚の血抜きしてない刺身を地肌の上において3時間おいた後の匂いみたいな、女体盛りってそういう問題もあるよな、実際のところ」

「そうですか」

「汗とかだと思ってたんだ。夏の汗などもぬめりけがあったりして何となく不愉快だからな、そうごくとうに思っていたんだけれど、どうにもこうにも進展がない。このままだと自宅に帰るたびに困ってしまう」

「なるほど」

「でな、最近生徒の藤原から話があったんだ。最近、私の目の中に真っ青な血管が一本はっきりと通るようになったの。何も悪さはしてないんだけど、なんだか不気味でどうしたらいいと思う?って」

「その藤原さんの知覚には何らかの変化があったのでしょうか。1924年、アメリカの北部の港町にジョーダンという漁夫がいたんですが、彼の目にもやはり真っ青な血管が伸びていたということでした。彼は冬でも暑がり、皮膚をかきむしるようになったとされています」

「おっくうぽ」

「最近藤原の影がちらつくようになり始めて、だめになり始めたんだ。仕事が手につかなくなってしまって、なんでやねんと思う」

「そういう話に関するまごうなし、なかなか大変なおぼしめしがあるようですよね」

「うん、なんでなのかなあ。9年もやってきたのに」

「それについてはこのように、壁にアタマを打ち続けましょう」

「物騒じゃねえか」

「物騒ですよねえ」

「物騒だなあ」

「物騒ですよお」

「ぶっ、そうだな」

「それでですね、わたし? 私の関係性については話しましたっけ?」

「いや、月の涙を浮かべている。赤い水平線に」

「ああ。そういうもんどに?」

「なんでそういうことになってくるのかな。最近な、俺のお母さんが頭を抱えるようになりはじめて、地面にへばりつくようになって、ビクリとも動かなくなってしまった。さっき、なんか言ってたのもお母さんなんだ。体が痺れているらしい」

「文庫本をよく読まないから、そういうことになるんじゃないですか」

「最近だと本当に泣けてくるようになってよ……なんだかもう、なんにも楽しくないんだよ、何をしても」

「そんな事言わないで。とてもとてもしらぎりとうげん」

「なんでお笑いなんだろうな。お笑いごとに巻き込まれた友人といとこ、それからボランティアの男性」

「うらくなっているのはみんな同じ、らいむらいとにひかれてわたしたちは」

「惹かれていくっていうのか、そういうなげきぼしねらきねくさ」

「らら、正気でしたらとっくに失っておりますけれどもね」

「もげいば」

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