第10話


『彼は無事でしょ。なにをそんなに狼狽えてるの』


彼女の、確信に満ちた声色を、感じて、じぶんのことを宥めてみる。


さっきまで「彼は、どこ?」って騒いでたのは、彼女のほうだったよね。


と言っても、彼女は、私の一部なのだけれども。


なんだか意識が、急に、成長したみたい。


あっけにとられて、すとん、とパソコンのまえに座った。


なんとなく、ぽちぽち、音を、つくる。


こんどは、すこし軽快な。


音を重ね合わせたりも、する。


アップテンポな曲に、乗って、乗って乗って。


いつしか集中していたよ。


彼が帰って来たのも、気が付かないほど。

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