【SOS】クラスごと異世界召喚されたけど、俺のスキルは「掲示板」だった
松川 瑠音
プロローグ
『――本日午後、日本全土を震撼させる不可解な事件が発生しました。』
夜の全国放送。キャスターの声は、未だかつてない混乱を隠しきれていなかった。
『〇〇県立高校の3年2組において、担任を含む計31名が同時に行方不明となりました。驚くべきことに、そのうち3名は本日学校を欠席しており、それぞれ自宅の自室にいたことが確認されていましたが、家族が異変に気づいた時には、部屋はもぬけの殻だったとのことです。警察は、学校という場所ではなく「3年2組という集団」そのものを狙った、極めて特異な事件として捜査を開始しました――』
教室には争った形跡もなく、机の上には開かれたままの教科書と、書きかけのノート、そして主を失って転がったままのシャーペンだけが残されていたという。 現代日本で起きた、あまりにも非現実的な「集団失踪事件」。
警察の懸命な捜索にもかかわらず、手がかりは一切見つからない。
だが、夜が更けるにつれ、ネットの海ではある「噂」が急速に広まり始めていた。
【悲報】失踪した3年2組の生徒、ガチで異世界にいる説浮上www
1:名無しの救世主
お前らこれ見ろ。事件直後、掲示板に自称・生徒の書き込みがある
タイトル:【緊急】クラスごと異世界に飛ばされたっぽいんだけど、お前ら信じる?
12:名無しの救世主
今の最新ニュースだと、失踪者は「担任含めて31人」
でも書き込みのイッチは「自分たちの他に数人いない」って言ってるんだよ
この人数の食い違い、釣りにしては不気味すぎて怖くないか?
25:名無しの救世主
学校の近くで「空の色がおかしくなった」って動画が数本上がってたけど、どれもノイズが酷くて再生できないんだよな
物理現象じゃない何かが起きてる気がしてならない
38:名無しの救世主
イッチ、また消えた。魔力がどうこう言ってたから、通信制限的な制約があるのか?
誰か特定班、このイッチが本物かどうか明日までに検証してくれ
「……消えた。また画面が消えた……」
寺島 悠(てらしま ゆう)は、砂を噛むような思いで呟いた。
脳裏に浮かぶ【ちゃんねる】のウィンドウは、魔力切れを示す砂嵐を表示して消滅した。
周囲は深い森に囲まれた広場。
佐藤委員長が、能力で出した「光る剣」を松明代わりに掲げ、必死にクラスメイトをなだめている。
「みんな、落ち着け! とりあえず火を起こせる奴は……」
「そんなの無理だよ! 指から火が出るだけじゃ薪に火なんてつかない!」
絶望が広がる中、悠は親友の秋山に肩を貸してもらいながら立ち上がった。
「悠、スレ民なんて言ってる?」
「……最新のニュースだと、日本じゃ俺たち『31人全員』が消えたことになってる。休んでた佐々木たち3人も、家から消えたらしい」
その言葉に、近くで震えていた女子生徒が息を呑んだ。
「じゃあ、佐々木くんたちもこっちに来てるの……? でも、どこに?」
悠は地面に、現在の状況を整理するための図を指で描いた。
【グループA:現在地】24人
(悠、秋山、佐藤ら。比較的「普通の光」で飛ばされた組)
【グループB:行方不明】7人
担任の先生
窓際で「光が歪んでいた席」にいた生徒3名
自宅から消えた「欠席者」3名
「この7人は、俺たちとは別の場所にいる可能性が高い。……それか、召喚の『生贄』にでもされたか」
悠の脳裏に、あの一瞬の光景がフラッシュバックする。教室が光に包まれた時、窓際の空間だけが、まるでガラスが割れたように歪んでいた。
「秋山、次に繋がったらスレ民に聞いてみる。この『消えた7人』に共通点がないか。もし特定の何かを選別して拉致したんだとしたら、その理由が帰るヒントになるかもしれない」
暗闇の異世界で、悠は唯一の武器である「掲示板」が回復するのを、じっと待ち続けた。
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