あまいみかん箱

にっこりみかん

【 季節の色をみつけたよ 】 ー 出会いで世界は色づいた ー (1139文字)

「冬の色は、白だよね」


 と、彼女は言った。

 世の中は灰色だとずっと思っていた僕にとって、初めて“違う色”を知る瞬間だった。


 彼女は季節ごとに、色があることを僕に教えてくれた。


 春は、ピンクから始まり緑に包まれる。

 夏は、海の青、空の青。

 秋は、赤と黄色とオレンジ。


 彼女といる時だけ、この世界に色があった。

 とても鮮やかで、とても眩しくて。

 生まれて初めて「生きてる」って感じられた。


 そして、ずっと一緒にいたい。

 そう思うようになった。


 だから───、僕は今日、

 彼女と結婚する。



 新郎新婦の控室。

 目の前には、真っ白なウエディングドレスを着た彼女が立っている。


「冬の色になったね」


 と言うと、彼女は頷き、微笑みながら答えた。


「うん、好きな季節の色だからね」

「そっか、冬が好きだったね」

「うん、小さな頃からずっとね……、でもね、大人になってから、よけいに好きになったんだよ」


 何かいいことあったの?

 そう尋ねると、彼女はいつもと変わらぬ口調で言った。


「あなたに出会えた季節だから」


「えっ」


 不意を突かれて、戸惑った。


「えへへへ」


 と、彼女は少し照れたように笑いながら、


「実はね、あなたと出会うまで、私の世界は真っ白だったの」


 視線をずらし、少し遠くを眺めるように話す。


「色なんてなくて、すべてが白く見える世界だった」


 聴いたことのない話だった。


「それがね、あなたに出会ってから、この世界には、いろんな色があるんだ、って気づけたの。

 

 春はね、ピンクに包まれてやわらかい感じ。

 夏の青い空は、もう眩しすぎで、力強い感じ。

 秋は、赤や黄色やオレンジが暖かで、豊かな感じ。


 季節ごとに色があるんだって、気づけたんだよ」


 いつの間にか、彼女は視線を僕に向けていた。

 そして、しっかりとした表情で言った。


「あなたと出会う度に色が増えていった。それがいつの間にか溢れだして、──今、私の世界はいろんな色で輝いてるんだ」


 ……そんな。


「私の世界を、こんなに色とりどりにしてくれて、本当に、ありがとう」


 ひとりでに、涙が溢れてきた。

 霞んで彼女の顔をおぼろげにしか確認できない。


「なに、泣いてんだよ」


 と、彼女に突っ込まれる。


 そっか、彼女も同じ気持ちだったんだ。

 そう気づいたら、もう感情が抑えられなかった。


 僕は「うるせ〜ぇ」と、精一杯おどけて見せてから涙を拭いて、彼女にこう言った。


「これからも、いろんな色を見つけに行こう」

「うん、たくさん見つけようね、一緒に」


 僕が差し出した手を、彼女はしっかりと握り返してくれた。

 そして、僕たちは扉の前に立った。


 扉の向こうには、見たこともない色がたくさん待っている。

 どんな色を、二人で見つけられるのだろう。

 楽しみで、いっぱいだ。

 




おしまい。

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