近衛戦記

犬大好き

第1話 異世界転移


俺の名前は近衛蒼紫。

29歳独身の、ごくごく平凡なサラリーマンだ。

だが俺には、唯一誇れるものがある。

それは自家用操縦士という資格を持っていることだ。

簡単に言うと、趣味などで飛行機を操縦することが可能ということ。

俺は休日になると、よく飛行機に乗りに行っていた。

その日も、いつも通り飛行場へ向かった。

そして、いつも通りに飛行機を操縦していた……はずだった。

突然、エンジンが停止した。


「なっ……!?」


俺は慌てて着陸を試みた。

幸いにも、なんとか着陸には成功した。

だがコックピットから降りた瞬間、俺は言葉を失った。

明らかに、民間機ではない。……だって、爆弾らしきものが積まれていたからだ。

困惑していると、制服を着た偉そうな人物が近づいてきた。

「貴様、誰だ!」

低い声で怒鳴られる。

「す、すみません! 私は…一般人です」

「一般人だと?」

「この機体に民間人が乗る許可は出ていない」

「え?」

思わず声が漏れた。

「貴様、どこの国の諜報員だ!」

「違います! 俺は日本人です……」

「日本……?」

「そんな国、世界にはないぞ?」

「え……? そんな、まさか……」

俺は必死に日本の話をした。

だが彼は「そんな国はない」と言うばかりだった。

……もしかして、俺がいた世界とは違うのか?

そう思った俺は、ある可能性に思い至る。

今が何年なのかを聞けば、分かるかもしれない。

「今って、西暦何年ですか?」

そう聞くと、彼は首をかしげた。

「西暦? というものは知らないが……旭暦1936年だな」

「1936年!?」

「ああ、そうだが?」

「……すみません、ちょっと頭が痛くなってきました」

彼は少し考え込むような表情をしたあと、言った。

「……お前、まさかあいつと同じで、別世界から来たんじゃないか?」

「はい……多分、別世界というところから来ました」

「そうか……ならお前の行動も分かる」

そう言って、彼は改めて俺を見た。

「君、名前は?」

「近衛蒼紫です」

「蒼紫か。俺の名前は舩坂誠だ。一応、この飛行隊の隊長をしている。よろしく」

「よろしくお願いします」

……これから、俺はどうしたらいいんだ?

そんな不安が頭をよぎった時、誠さんが口を開いた。

「蒼紫、お前が良ければなんだが……我々の部隊に入らないか?」

「君、一応飛行機は操縦できるんだろう?」

「我々としては、できるだけ戦力が欲しい。このことは俺が上に話してやる」

「最低限の衣食住は保証する。……どうだ?」

正直、少し安心した。

この誘いに乗れば、衣食住は確保できる。

だが……軍隊だ。しかも別世界とはいえ第二次世界大戦の前だ。

死ぬ可能性だってある。

「……少し、考えさせてください」

「分かった。だが今日は、うちの基地に泊まっていくといい」

「基地で、君に渡したいものがある」

「分かりました」

俺はそのまま基地へ向かった。

基地には他の隊員もいて、簡単に挨拶を交わした。

そして誠さんが言っていた「渡したいもの」を受け取る。

それは、一冊の本だった。

表紙には、こう書かれていた。


『異世界辞書』


とても分厚く、ずっしりと重い。

俺は中身の一部を抜粋して読んだ。

「これを読んでいるということは、君は多分日本人だろう。

これは、こちらの世界で一番信用している人に渡した。

単刀直入に言う。

君が今いる世界は、こちらの世界での第二次世界大戦と、同じ道を歩むと思う。

だが、違う点が一つある。

この世界には『魔力』というものがある。

各国は魔力を軍事利用しようと研究し、そして成功してしまった。

もし第二次世界大戦が起きてしまえば、こちらの方が、より凄惨な事態になるだろう」

……ということらしい。

俺は他のページもパラパラとめくった。

そこには国の名前や地理情報などが記されていた。

地図を見て、俺は驚いた。

この世界の地図と、元の世界の地図は、ほとんど同じだった。

しかも、ここは日本と同じ島に位置している。

国の名は……


「大日旭帝国」。


俺は、この世界で生きていけるのだろうか……

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