ぬいぐるみ神様を仲裁したおっさん、ステータスが累乗(バグ)って無双 〜【神に愛されすぎて加護不発】のおっさん、二度目の追放後に最強に〜
野菜ばたけ『転生令嬢アリス~』2巻発売中
第一章:二度も追放された俺が、【神様に愛され過ぎている】?
第一節:追放されたらステータスがバグった!?
第1話 実は神に愛された男の、追放
天界の『見守りの間』。
そこでは今日も、ぬいぐるみ姿のちんちくりんな神様たちが、一人の男を巡って熾烈なキャットファイトを繰り広げていた。
「ダリスは俺が愛した男だ! 俺の熱い加護で『爆炎の覇王』にするんだよ!」
「うるさいですね、バカ犬。ダリスには私の闇の加護こそがお似合いです。静かにすべてを屠る『冥府の暗殺王』……最高です」
「どっちもダメ! ダリスはうちの加護で、一生美味しいご飯を作って、食べて、『料理の聖人』として人類最長の長生きをするの!」
短い手でポカポカと叩き合い言い合う神々のすぐ横には、現世を映す鏡がある。
そこに映るのは、今日も楽しげに、勤勉に働く四十路の男、ダリス・ヴィストン。
神からの恩恵――加護が一つも与えられていない、稀有かつ苦難の境遇……と思い込んでいる男。
彼らの終わりなき論争の原因でもあるその男のステータスには、ヒト如きには見えない秘密があった。
―――――
【ステータス】
物理戦闘
・剣:A(+剣神の加護:※他加護との競合により出力0)
・槍:A(+槍神の加護:※他加護との競合により出力0)
:
:
魔法
・火魔法:A(+火神の加護:※他加護との競合により出力0)
・水魔法:A(+水神の加護:※他加護との競合により出力0)
:
:
―――――
「お前らのせいで、今日もダリスの加護は無効のままだ!」
「せっかく加護が付いてるのに、相殺されて消えちゃって……ヒトにはダリスの努力の証拠、平凡の極致だけど才能ある者にとっては底辺でしかない【ステータスオールA】しか見れないんだからぁ。可哀想だよぉ! 皆基本的には一人一つ以上、加護を持ってるっていうのにぃ!!」
「じゃあ貴方たちが譲ればいいでしょう」
「ヤダ! お前が譲れ!」
「嫌です」
「じゃあ仕方がねぇな。今日も行くか」
「最初からそのつもりだったでしょう? でなければ、誰もこの『ぬいぐるみ制限モード』になっていません」
「神の姿のままで現世に降りると、世界が消滅(バグ)っちまうからな」
そう言ったのは、赤い狼姿の火の神。
つり上がった下限半月の目のその狼は、短い手をブンブンと振りながら「今日こそダリスに俺の加護を付ける!」と意気込む。
すると、おっとりとした目の黒猫姿の闇の神が「それは私のセリフです」と言って張り合うように彼の隣に並んだ。
「お前は、いつもいつも事ある事に俺と張り合ってくるけど、何なの?! 俺の事好きなの?!」
「自意識過剰ですか、イタい人ですね」
「はぁーっ?!」
テチテチと先を歩く二柱の後ろに、ゾロゾロと続く幾柱もの神々。
そのうちの一柱が、苦笑する。
「まぁ毎日現世に降りたところで、ダリスには俺たちの姿、まったく見えてないし声も聞こえないんだけどな」
「それでも貴方も行くあたり、『もしかしたら今日は』っていう期待が、いつもどこかにあるからでしょ?」
「まぁそれは否定しない。『あわよくば』ってな。本当に鈍感で困るよな。我が愛し子も。――この世の誰よりも神々に愛された、唯一無二の存在なのに」
◆ ◆ ◆
「――ダリス、お前はもうクビだ。荷物をまとめてさっさと失せろ」
今年で四十歳になるという年。
そんな言葉一つで、俺はどうやら十年も働いた鍛冶工房から追い出されるらしい。
「最初は小さな工房だったが、うちも成長し今や国屈指の大工房だ。今や【鍛冶神が住まう工房】なんて言われてる! なのにお前は、ずっと進歩なく『鍛冶ステータス:A』のまま。加護補正でSやSSばかりのこの工房に、お前みたいな凡人は、相応しくないんだよ!」
毎日金槌を振るい金属を鍛えているその腕は太く屈強で、ガタイが小さい訳じゃない俺は、ドッと胸を押されて倒れ込んだ。
嘲笑と軽蔑の混じった目を向けられる。
たしかに俺のステータスは、Aだ。
それは鍛冶だけに留まった話ではない。
人類が努力だけで到達できる最高ステータス:A。
しかしそれは才能がない奴の最高到達点というだけで、才能――つまり神から加護を授かっている人間は、簡単にその壁を超える事ができる。
加護には色々な種類があるが、誰しも何かしらの加護は持っていて、みんなそれを活かして生計を立てている。
大きな鍛冶工房ともなれば、自ずと鍛冶の加護を持つ人たちが集まってくるのだ。
だからどうしても努力だけの俺じゃあ、仕事に着いて行くのが精いっぱいで……。
俺には、加護がない。
そんな人間は、殆どいない。
だから基本的に、ただそれだけで存在自体を軽んじられる傾向にあった。
でも俺は、散々苦労し、しかしそれを努力と工夫で切り抜けてきた……と思っていたのだが。
「商談も、素材管理も、炉や工房の掃除も、道具の手入れも、代わりにやる奴がいるとは思えないけど……」
「はっ! どうやら自分が価値ある人間だと思いたいようだが、そんなのやる事のないお前が無理やりに見つけてきた仕事だろ? 各自にさせればいいだけの話だ。お前にできたんだから、他にできない訳がない。たったそれだけで、お前が気にしている事はすべて解決だ」
ニチャリという擬音が似合うような、嘲笑がふんだんに盛り込まれた笑みで見下され、俺は「……そうか、分かった」と静かに答えながら立ち上がる。
人生二度目の追放だ。
一度目の追放を教訓に、やれる事は全部やってうまく立ち回ってきたつもりだったが、どうやらあまり意味はなかったらしい。
俺は「ふぅ」とゆっくり息を吐いた。
努力しかできないのだから、努力した。
その結果が、今の俺のこのステータス――ステータスとして表示されるすべての項目をAまで上げた、『ステータスオールA』状態だ。
お陰でできる事も増えた。
陰ながら工房を支えてきたつもりだった。
たしかに他のやつら程すごいものは作れないが、その分皆が鍛冶に使う道具を作ったり、作業環境を整えた。
人によって好みがあるから、その辺細かく調整したりな。
でも、それらすべて「要らない」というのなら、俺から押し付けるようなものでもないだろう。
妙に、ホッとした……とは少し違うが、肩の荷が下りたような感じがした。
思えば、もう四十だ。
普段から鍛えているとはいえ、流石に体も全盛期と同じとはいかなくなってきた。
ステータスももうこれ以上上がらないのだし、やれる事はすべてやってきた。
なら、もういいんじゃないか?
これからは、穏やかな生活を送っても。
一度目の追放の時のような絶望も悔しさもないのは、年を取ったからだろうか。
肩肘張らず、必要とされるために無理をするような事もない。
美味い物を食って、のんびりする生活。
そういえば今まで努力、努力で、そんな生活とは今まで無縁だった。
「……あの森なんか、いいかもな」
住み込みだった工房から、荷物を半ば無理やりに押しつけられて、追い出されて。
空を見上げてそんな事を呟いた。
空は青い。
心当たりの場所は、一度目の追放前――冒険者時代に見つけた場所だ。
小さな集落しかない場所だが、皆温和でいい人ばかり。
若者が外に出て行くもんだから空き家が増えて困るって、十数年前は言っていた場所。
「まぁ、ちょうどいいのがなけりゃあ、立ててもいいしな」
森なら土地はあるだろう。
幸いにも、俺は建築ステータスもA。
一人暮らし用の小さな小屋くらいなら、時間をかければそれなりのが作れる。
独身男のいいところは、身軽なところだ。
俺は基本的に、決めたら即行動が昔からの信条だった。
十年ぶりに、王都を出た。
新天地を目指して歩く足取りは、軽く清々しく……。
――その背後に、ぬいぐるみの集団がテチテチと付いてきていることには、ダリスはまだ気づかない。
=====
※「面白そう」「続き読みたいな」と思ってくださった方は、ぜひ作品フォローや♡だけでもポチっとして行ってください!
貴方のワンポチが、この作品を押し上げる大切な一票です!
ぜひ一緒に作品を育てていっていただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます