世界が反転した日、底辺の俺は《マインド》最強に至る 〜かつて俺を見下した連中が媚びてくるが、俺は元総理の孫娘(最弱)を守るために命を懸ける〜
ユニ
第1話 世界の転換
世界がひっくり返ったのは、ちょうど一年前のことだ。
ある日突然、地球全体を白い光が包み込み、一部の人間が《マインド》と呼ばれる能力に目覚めた。
円もドルも、経済システムそのものは死んでいない。電車は走り、コンビニには弁当が並び、会社員は満員電車に揺られている。
だが、「誰が偉いか」というルールだけが残酷なまでに書き換わった。
どれだけ金を積もうが、東大を出ようが、《マインド》を持たぬ者は「無能力者(ノー・マン)」として見下され、理不尽な搾取の対象となる。
逆に、俺のような学歴も職もなかった底辺が、強力な《マインド》一つでタワマンの最上階に住み、億単位の金を稼ぐ時代になったのだ。
「おいおい、そこを歩いてるのは『万年平社員』の明星(みょうじょう)じゃねえか?」
池袋サンシャイン60――今や「イケブクロ・ダンジョン」と呼ばれる魔窟の入り口へ向かう俺の足を、ニヤついた声が止めた。
振り返ると、ブランド物のスーツを着崩した男が立っていた。かつて俺が勤めていたブラック企業の元上司、田所だ。昔は俺をゴミのように扱い、散々パワハラを働いた男である。
「お前も覚醒したらしいな? だが残念だったな。俺の《マインド》はこれだ!」
田所が右手を掲げると、ボゥッ、とバスケットボール大の火球が浮かび上がった。 周囲の野次馬が「おぉ……」と声を漏らす。
「属性持ち(エレメンタル)の『炎』だ! 選ばれた強者の証よ! お前みたいな無能、俺の炎で灰にして――」
田所が得意げに火球を投げつけてくる。 俺はため息をつき、ポケットに手を入れたまま、軽く睨んだ。
「――消えろ」
ドォォォォン!!
俺から溢れ出した漆黒の闘気が、物理的な暴風となって吹き荒れた。
田所の自慢の炎など、ロウソクの火のように一瞬で掻き消える。それどころか、余波を受けた田所自身が数メートル後方へ吹き飛び、無様に尻餅をついた。
「ひ、ひぃぃッ!?」
「あ? なんだそのチャッカマン。タバコの火でもつけんのか?」
「あ、あ、あ……」
腰を抜かし、股間を濡らして震える元上司。
俺の《マインド》の正体も知らずに絡んでくるとは。今の俺とお前では、生物としてのステージが違うんだよ。
「……さて、今日も稼ぎに行きますか」
俺、明星亜土(みょうじょう あもん)は、もはや視界に入れる価値すらない男を無視し、サンシャイン60を見上げた。
俺の《マインド》は『黒い大剣』。単純な物理破壊に特化した、戦闘向きの能力。 高価なオーダーメイドの戦闘スーツ――かつての年収の数倍の値段だ――の襟を直し、俺はゲートをくぐる。
今日の目標は深層30階層。そこでしか手に入らないレア資源を換金すれば、また口座の数字が桁を増やすだろう。
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