カップ麺とスカラベ【AIリライト版】
黒猫夜
カップ麺とスカラベ ーSide:父ー
カップ麺、できたぞ。
……食えるか?
え? ここ、置いていいのか?
お嬢さんの柩じゃないか。
いいのか?
……ああ、わかった。置くよ。置く。
待て、フタをはがすからな。
よし。あ、待て待て。手づかみは待て。
あっ、熱かったか。
ほら、言ったじゃないか。
怒るなよ。ちょっと待ってろ。
あー、あったあった。箸。
チョップスティックだ。わかるか?
……あー、古代エジプトにはスプーンしかないんだったな。
ちょっと待ってろ。食わせてやる。
ほら、口開けろ。熱いぞ。
仮面は外さない?
あ、そりゃそうだな。失礼した。
仮面の下からで食えるか?
ふーっ、ふーっだ。わかるか?
……ん?
あ、息してないのか。
そうか。
ミイラだもんな。
ちょっと待て。冷ましてやる。
……あー、くわえるだけじゃだめだ。
すすれ。ずっ、ずっ、だ。
……ああ、そうか。
息がないと、すすれないか。
どうすっかな。
ん?
丼を持つ?
ああ。吸い物みたいに飲むのか。
あんた、賢いな。
あとは一人で食えるな?
ふう……。
ありがとう?
どういたしまして。
いや、こっちも、ピラミッドに閉じ込められてどうしたもんかと思ってたが、お嬢さんと一緒でよかったよ。
……まあ、正直、動くミイラに腰を抜かしたがな。
しかし、災難だね。
あの世に行かず、こっちで目を覚まして……。
出口は崩れて、こんなおじさんと心中だ。
副葬品を見る限り、若くして死んだんだろう。
お互い、ついてない。
まあ、ファラオを見つけたら開けようと思ってた、最後のカップ麺だ。
あんたが食え。
そうか。うまいか。
このうどん、不思議な味だろ。
なんていうか……体に、しみる味だ。
お、どうした?
……ああ、そこにスカラベがいるのか。
大丈夫だ。踏まない。
好きなのか。
娘もな、丸っこい虫が好きでさ。
よく虫取りに付き合わされた。
ほしいのか?
とりあえず、食い終わってからにしろ。
……まだ麺が残ってるな。
いらないのか?
ああ、麺類は初めてか。
こうやって、巻き取って……ちゅるん、だ。
……うーん。
待ってろ。短く切ってやる。
食べやすいようにな。
大丈夫。
こういうのは、慣れてる。
ようし。
これなら、スプーンでいけるだろ。
……ああ、持ち方はこうだ。
そう、それで……取れるか?
よし。うまいな。
……
あ、すまん。
何でもない。
死んだ娘を、思い出しただけだ。
俺は料理ができなくてな。
離乳食もうどん。
大きくなっても、うどんかカップ麺。
あいつ、最後に言ったんだ。
カップ麺、食べたいって。
……もっと、いいもん食わせてやりたかった。
すまん。
死にゆくおじさんの世間話だ。
コブラに噛まれたと思って、忘れてくれ。
……ん?
食ったら、肌つやがよくなったな。
ミイラでも、そういうのあるのか。
お、立てるのか。
俺につかまれ。
壁か。
壁画と、象形文字だな。
読むのか?
……食べる……いや、食べ……たい。
まだ足りないのか?
違う?
……
供物を、食べたい?
……おい。
まさか……。
「供物を食べたい」って、俺じゃないよな?
……違う、か。
……ん?
サソリ!?
あ、ああ……そこにいたのか。
危なかった……。
ありがとうな。
……次だな。
「父」……「と」……「一緒に」……。
「供物を」……「食べたい」。
……
「お父さんと一緒に、カップ麺を食べたい」
……って、言いたかったのか。
……はは。
優しいな。
長生きしてたら、いい王様になっただろうに。
……ん?
「私も」……「生きたい」……か。
だがな。
閉じ込められてちゃ……。
……ん?
残りの、うどんを?
いや、そんな……。
……「食え」……「生きろ」……?
……はは。
ありがとな。
……うまい。
生きてる味だ。
……。
なあ。
さっきのサソリ、どこにいた?
……ここ?
……ん?
隙間がある。
……よし。
動いた。
隠し通路だ。
やっぱりな。
スカラベは、太陽を運ぶ虫だ。
再生のしるしだ。
一緒に行くか?
外へ。
生きるために。
食うために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます