第24話 星の記憶(セレス・メモリア) ― 希望の塔を託して ―
封印の戦いから数十年後。
深い霧の晴れた高地にて、ひとりの女性が空を見上げていた。
”魔法王国”初代女王ニーナ。
かつては戦火に巻かれた辺境の小国の孤児であり、
星と命を繋ぐ巫女であり、そして――世界を救った、伝説の“癒し手の王”。
けれど、今その顔には、栄光ではなく静かな疲労と覚悟が滲んでいた。
「……やがて、ルヴィアンの封印は揺らぐ。
闇とは、人の心の中にあるもの……
それを完全に“消す”ことなど、きっとできないのよね」
彼女の声は風に溶け、遠くへと運ばれていく。
「だから私は――ここに、残すわ。未来へ続く、道標を」
見上げる先には、巨大な魔力の結晶“星核”が浮かんでいた。
それは大陸の星脈が交差する要所であり、世界中の魔法の流れを束ねる場所。
ニーナは、自身の全魔力と記憶を注ぎ込んだ封印を、
この地に“礎”として刻むと決めた。
「セフィル……あなたがもし、時の彼方から目覚める時が来たら。
その時こそ、私たちが築きたかった未来を共に叶えて」
彼の魂が、星の扉の向こうで待っていると信じて。
彼女の手には、星の結晶と、銀の枝を組み合わせた輝く杖。
魔法と記憶、癒しと封印、その全てを宿した“星の杖”が握られていた。
彼女はそれをゆっくりと地に突き立てる。
その瞬間、地脈が共鳴し、空に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
やがてその中央から、白銀の光が立ちのぼり、それは塔の形を成しはじめた。
――星紋の塔。
封印と守護、学びと再生の象徴として、
やがて魔法学園となるその塔は、彼女のすべてを託された“希望の器”だった。
塔の最上階には、魔法結晶の封印庫。
その奥深くには、セフィルの魂と、ルヴィアンの封印が隔てられて眠る。
そしてその扉には、二つの紋章が刻まれた。
一つは《星の巫女》の紋章――癒しの女王の証。
もう一つは《鍵守》の紋章――すべてを繋ぐ者の印。
「きっと……いつか、“第三の魂”が彼を目覚めさせる。
ルヴィアンの闇を真正面から受け止められる者が、現れる」
ニーナは静かに微笑んだ。
「私たち三人の魂は、終わってなどいない。
どれほど長い時が流れても、また出会える。
その時こそ……救えなかった想いを、叶えましょう」
──時が流れる。
魔法王国は、ニーナ亡き後も彼女の遺志を受け継ぎ、
星紋の塔は千年以上にわたり、数多の魔法使いたちを育ててきた。
けれど、塔の最上階だけは、誰にも開かれることはなかった。
ただ、時を越えて、その扉に呼応する者が現れるその日まで――
静かに、星々の記憶がそこに眠っていた。
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