第5話 六年生の秘密作戦

2012年10月24日 小雨


この日の昼休み、佐藤智が変な顔をして僕に話しかけてきた。


「聞いたんだけど、C組の連中が、お前の未来の彼女に手を出すつもりらしいぞ」


「山田猛虎だぜ、あいつは俺たち六年生で一番の喧嘩屋だよ」


「あいつらと衝突するのはやめといた方がいい。」

佐藤智は頭を使うのが得意だけど、体を動かすのは苦手なタイプだ。


「理由は? 智。青田は誰にも迷惑かけてないだろ?」

僕は原因を分析しようと頬杖をついた。


「いや、いじめっ子の動機なんてさっぱりわからない。たぶんあいつらにとって、こんな卑劣なことが楽しみなんだろう」

佐藤智はため息をついた。


「大丈夫だ。大不了俺のパパに言って、あいつらに注意させればいい。俺のパパ、めちゃくちゃ強いんだぜ」

九条良が鼻で嗤う。彼の父親は年収2200万円もする管理職だった。


「ただ、あいつらがたまたま弱そうな女の子を選んだだけの話だよ」

突然、凜とした少女の声が響いた。


「お前……誰だよ?」

僕たちは視線を向けると、雰囲気の冷たい女の子が立っていた。

三人とも訝しそうに顔を見合わせた。

僕たち三人:(¬_¬)


「初晴日和。」

名前を聞いたこともない女の子だが、勝手に自己紹介を始めた。


「C組の体育委員さんだよね、初晴さん」

初晴日和はうなずいた。


「もしお前たちが手を上げるなら、俺も加わる。剣道の家系の次女だから、けっこう強い」


「ちょっと待て、初晴さん。突然ここに現れるだけでも変なのに、どうして俺たちが喧嘩することになるんだ?」

佐藤智は学校に報告するか、まず話し合うべきだと主張する。


「メガネ君、あいつらに道理を説いても通じると思う? 行動するしかないんだ!」


「行動って……お前本当に小学六年生?」

佐藤智はとてもバカげていると思ったらしく、目を見開いた。


「それに、メガネ君じゃない。佐藤智だ」


「根本的な解決策を考えなきゃだめだ。たとえ喧嘩に勝っても、それは一時的なことだけだ」

僕が口を挟んだ。


「まず情報収集しよう。俺は今日、寿子に事情を説明する」


「智、お前は児童委員だから、C組の担任に話したらちゃんと重視してくれるだろ」


「日和さん。寿子のために手を貸してくれるなんて、本当にありがとう。こんなクールなクラスメイトと知り合えて、光栄だよ」


初晴日和の頬がほんのり赤くなった。

こんなにストレートに褒められるのは、慣れていないらしい。


「この間、放課後に寿子を護衛しよう。日和さんも一緒に来る?」


「日和? 一緒に? こいつ、少し気が早すぎるんじゃない? 俺よりもずっと気が早いじゃん」

初晴日和は、初対面なのに名字ではなく名前で呼ばれて、一瞬困惑した様子だった。


「じゃあ決まりだ。俺たちのチーム名は、学園正義小隊だ!」

僕は手のひらを上に向けて、三人を見た。


九条良はいつもならお菓子を食べながら喋っているのだが、この時だけは無口になっていた。

このチームに入れば、あいつらと敵対することになるのは明白だった。


「ふん、あいつらなんか怖くねえ!」

九条良は僕の手のひらに手を重ねた。


初晴日和も迷わず、手を載せた。


「お前たちさあ……」

佐藤智は白眼を翻しながら、最後に手を重ねた。


「俺がついてなきゃ、お前たちの衝動的な連中、本当に安心できないよ」

口は悪いけど、心は優しい佐藤智だ。結局、加わってくれたのだ。


「もし俺が殴られたら、お前たちが治療費払ってくれよな」

佐藤智はにっこり笑った。


「俺は金ないから、良が出せばいいさ」


「俺は半分だけだぜ。日和さんって、きっと裕福な家庭のお嬢様だろ? あとの半分はお前が出してくれ」


初晴日和:(ㅍ_ㅍ)

こんなに厚かましい三人組を見たことがない、という表情だった。


昼の太陽が四人の背中を暖かく照らしていた。

きっと、俺たちは誰かのために、少しの光を届けられるはずだ。


かつての僕は、ただの平凡な生徒だった。

だけど、アニメが好きな仲間たちと仲良くしていたから、いじめの標的にならなかったのだ。


「寿子、俺が絶対に、お前を守ってみせる」

僕は心の中で、強く決意した。

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