【魔力0】の落ちこぼれに転生しましたが、『銃』があるので何とかなりそうです 〜気がついたら学園最強の美少女とパーティーを組んでいました〜

ダマ

第1話:引き金

 

 カチッ、という乾いたクリック音が、深夜のワンルームに響いた。

 3枚並んだモニターの中央、青白い光の中で「VICTORY」の文字が躍る。  

 ヘッドセットの奥で、ボイスチャットの仲間たちが歓声を上げていた。


 「マジかよ! 今の状況で1対4を捲るか!?」

 

 「オートエイム疑うレベルだろ」


 「さすがカイ。一生ついていくわw」


 「……よしッ! あぶねー……」


 俺――甲斐透(かい とおる)は、小さくガッツポーズをして、安堵の息を吐き出した。  

 今のエイムは完全にまぐれだ。心臓がバクバクいってる。  

 俺はヘッドセットをずらし、ぬるくなったエナジードリンクを喉に流し込んだ。  

 炭酸の刺激が、疲れた脳みそに染み渡る。


「さて、と」


 マッチング待機の間、俺は手持ち無沙汰を埋めるためにデスクの引き出しを開けた。  

 取り出したのは、コルト・シングルアクション・アーミー。

 通称、ピースメーカー。  

 西部劇でおなじみの回転式拳銃だ。  

 もちろん、本物じゃない。ア〇ゾンで買った合金製のモデルガンだ。


 俺はそれを手に取ると、慣れた手つきでハンマーをハーフコックし、指先でシリンダーを弾くように回した。 チ、チ、チ……という、精密時計のようなクリック音。

 この重みとメカニカルな感触がたまらない。


 俺はいわゆる「ガンオタ」で「FPS廃人」だ。  

 画面の中なら、どんな銃でも撃てる。世界ランカーとしてチヤホヤもされる。  

 だけど、現実はこれだ。  

 薄暗い部屋で、偽物の銃をカチャカチャいじっているだけの、冴えない大学生。


「はぁ……一回でいいから、本物を撃ってみてぇなぁ」


 トリガーを引くと、パチンと軽い音がした。  

 反動もなければ、火薬の匂いもしない。  

 海外の射撃場に行く金もないし、そもそもパスポートすら持っていない。  

 俺の「銃撃戦」は、いつだってモニターの中だけだ。


「……腹減ったな」


 時計を見れば深夜2時。  

 夜食のカップ麺と、明日の分のエナドリが切れていたことを思い出す。  

 近くのコンビニに行って夜食でも買いに行くか。

 一旦ゲームをやめて、俺はよれたスウェットのまま、財布だけ持って立ち上がった。

  


 信号待ちをしている時だった。  

 俺はスマホを取り出し、以前からマークしていたマ〇イの新作エアガン『OVOLT』の情報を貪るようにチェックしていた。


「うおっ、マジか!ついに発売日決定してるじゃん!」


 画面をスクロールする指が止まらない。  

 新開発のリコイルエンジン搭載に、アルミ削り出しのフレーム。  

 レビュー動画を見る限り、作動音も反動も桁違いだ。


「っはー……たまんねぇ。このフォルム、完全に芸術品だろ」


 値段は高い。今の全財産が吹き飛ぶレベルだ。  

 だが、ガンオタの俺に迷いはなかった。


「よし、買う。来月の食費削ればいける。ポチるぞ」


 ニヤニヤしながら予約ボタンを押そうとした、その時だった。


 キキーッ! という耳障りな音が響いた。  顔を上げると、視界いっぱいに白いヘッドライトが迫っていた。


 ドンッ――


 衝撃。痛みを感じる暇すらなかった。  

 宙を舞った俺の意識がブラックアウトしていく中、最後に頭をよぎったのは、家族への謝罪でも、人生の走馬灯でもなかった。


(あ、やべ。ブラウザの履歴、消してねえ……)


 そんな、しょうもない後悔だった。


 


 目覚めたとき、最初に感じたのは土と、カビ臭いような古い匂いだった。


「……んぐ、う……」


 俺は硬いベッドの上で体を起こした。  

 全身が痛い。トラックに轢かれたはずなのに、五体満足で動くのが不思議だ。  

 周りを見渡して、俺は固まった。


 パソコンも、モニターも、愛用のゲーミングチェアもない。  

 あるのは、無骨な石の壁と天井だけ。  

 どう見ても日本の病院でもない。


「どこだよここ……誘拐?」


 声を出して、違和感を覚える。  

 自分の声が高い。  

 慌てて部屋の隅にあった姿見を覗き込むと、そこには見知らぬ少年が映っていた。  

 色素の薄い茶髪に、少し気弱そうな顔立ち。

 体もヒョロっとしていて、筋肉の欠片もない。


「誰だこいつ……っていうか、俺か?」


 頬をつねると痛い。

 鏡の中の少年も顔をしかめる。  

 その瞬間、頭の中に知らない記憶が浮かんで消えた。  

 カイル。15歳。ヴェルム王国のアルカディア魔導学園に通う生徒。  


「カイルって……外国人?いや、王国ってなんだよ」


 ラノベやアニメでよく見る「異世界転生」ってやつか?  

 いやいや、まさか。

 そんなのフィクションの中だけの話だろ。  

 俺は混乱しながら、重厚な木の扉を開けて部屋の外に出た。


 そこには、石造りの長い回廊が続いていた。  

 すれ違う人々は、ブレザーのような制服を着ていたり、マントを羽織っていたりする。  

 スマホをいじってる奴なんて一人もいない。  

 どう見ても、映画のセットかテーマパークだ。


「マジかよ……マジなのか?」


 夢にしてはリアルすぎる空気感に、鼓動が早くなる。  

 もし本当に異世界なら、転生特典のチート能力とかあるんだろうか。  

 そんな期待と不安を抱えながら、突き当たりのテラスに出ようとした、その時だった。


 ドォン!!


 腹に響くような爆発音が聞こえた。  

 ビクッとして身を縮める。


 「うおっ!? なんだ!?」


 テロか?それとも事故?  

 俺は恐る恐る手すりから身を乗り出し、眼下を見下ろした。  

 そこには、俺の常識を粉々に砕く光景が広がっていた。


 石造りの校舎に囲まれた広大な広場――演習場だ。  

 そこで、ローブを着た生徒たちが、短い杖を振っている。  

 次の瞬間、彼らの手元から「火球」が発射され、設置された的を派手に吹き飛ばした。  

 別の場所では、氷の礫がマシンガンのように的を破壊している。


「すげえ……CGじゃない」


 熱気と衝撃が、風に乗って頬を撫でる。  

 その圧倒的な光景を見た瞬間、カイルの記憶と思考がカチリと噛み合った。


「……魔法」


 この世界には、「魔法」と「魔物」が存在するのだ。  

 俺は手すりを握りしめ、身を乗り出した。  

 恐怖よりも先に、ゲーマーとしての血が騒いだ。


(魔法があるのかよ! ってことは、あの火の玉とか撃てるのか!?)


 この世界の人間は、体内に「魔力」を持っているらしい。  

 俺は自分の両手を見つめた。  

 まだ、自分がどんな能力を持っているのかは分からない。  

 このヒョロい体で何ができるのかも不明だ。

 けれど、もし。  

 もし俺にも、あの魔法とやらが使えるのなら。  

 前世で叶わなかった「本物を撃つ」という夢が、魔法という形で叶うかもしれない。


「……撃ってみたい」


 俺は広場を見下ろしながら、子供のように目を輝かせた。  

 モデルガンじゃない。コントローラーの振動でもない。  

 自分の指先から、あの威力をぶっ放す感覚。  

 想像しただけで、ゾクゾクする。


「とりあえず、情報収集だな。俺の今のステータスとか、どうなってんだ?」


 俺はニヤけそうになる顔を引き締め、魔法について調べるために歩き出した。  

 回廊を少し進むと、大きな掲示板の前で数人の生徒が立ち止まっているのが見えた。  

 俺もさりげなく後ろから覗き込む。


 羊皮紙のような紙に、手書きの文字が並んでいる。  

 読める。カイルの知識のおかげか、異世界の文字が日本語のようにすんなりと頭に入ってきた。


『新入生各位 魔力測定の儀について』

『日時:明日 午前十時より』

『場所:大講堂』


「……新入生?」


 その文字を見て、俺の中で曖昧だった記憶が補完されていく。  

 そうだ、カイルは今年入学したばかりの1年生だ。  

 地方の村から出てきて、期待と不安に押しつぶされそうになりながら、昨日は早めに寝てしまったんだった。


「なるほど、そういうことか」


 俺はポンと手を叩いた。  

 どうりで魔法の使い方が分からないわけだ。まだ習ってないし、自分の魔力を測ってすらいないんだから。  

 つまり、明日の「魔力測定の儀」が、俺の異世界ライフにおけるチュートリアルであり、最初のイベントってわけだ。


「測定の儀、か……。俺の中に眠るチート魔力が判明して、会場が騒然となる。ベタだけど熱い展開だ」


 俺は掲示板の前で、抑えきれない笑みを浮かべた。  

 明日の今頃、俺は最強の魔法使いへの第一歩を踏み出しているはずだ。  

 炎か、雷か。どんな属性でもいい。  




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 読んでくださりありがとうございます!


 フォローと最新話からさらに次のページの「★3」押してもらえると嬉しくて泣き叫びます(笑)

 ランキング上位を目指して更新頑張ります!

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