第2話 ベニス座

暗い楽屋。壁には「笑うな、働け」の標語。

アントニオが机に向かって必死に戯曲を書いている。

奥さんがドアを開けて入ってくる。ドレス姿で、煙草をくわえている。

奥さん

「ねえ、次の芝居、私が主役よね?」

アントニオ

「もちろん……でも、予算が……」

奥さんは腕を組んで睨む。

奥さん

「予算がないなら、作りなさいよ!お金を!」

アントニオは観客に向かってモノローグ。


アントニオ(モノローグ)

「僕はただ、静かに芝居を書きたいだけなんです。

なのに、なぜこうなるんでしょう?

昨日までの悩みは『セリフが長すぎるかな』だったんですよ?

それが今、『肉一ポンド』って言葉に人生をかけようとしてる。

……肉一ポンドって何キロなんですか?誰か教えてください。」

(観客笑い)


奥さんが机を叩く。

奥さん

「いい?この芝居で私が主役じゃなかったら離婚よ!」

アントニオは小声で「はい……」と答える。


軽快な音楽だが、どこか不穏なマーチ調。

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